明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常27 入院中のエピソード (その2)

こんにちは。

 

前回は、入院中自分の体に起きたことの中で、とくに苦労させられたことについて書きました。ちなみに、食事については、意識が戻った当初はおかゆ中心で、水はとろみをつけたものしか飲めない、という状況でしたが、その後は次第に回復し、3週間ぐらいで、普通食をまったく問題なく完食できるようになっていました。つまり、体調は順調に回復していったのです。

 

体調が回復してくると、次第に周囲のことが色々と気になるようになります。私の場合、4年前に他の病院に長期入院していたので、どうしても、ふたつを比較する目で見てしまう、ということもありました。もちろん、両方とも、スタッフの方々は本当に優秀でしたし、常に患者のためにベストを尽くそうとしておられたことは、言うまでもありませんが、それも踏まえて、この2か月の入院期間中に感じたことをいくつか紹介しましょう。

 

この時入院した病院は、まず設備の面で、本当に気持ちの良い病院でした。というのも、建物そのものがほんの少し前に竣工したばかりのピカピカで、施設や機械は最新。4人の相部屋となっている病室は、ひし形に近い形で、すべてのベッドが窓に面するようにデザインされていました。

一度でも入院経験のある方ならわかると思いますが、ふつう、4人部屋は長方形で、2人が窓側、2人が廊下側、というように、ベッドが配置されているため、その環境には少なからぬ差が生じるのです。そういったことを解消するためでしょう。おそらく建設費等が余計にかかるにもかかわらずこのような設計を採用した病院には本当に頭が下がります。

まだ、見舞いに来られた方と気軽に話をできる談話室も、開放感のある広い空間で、その窓からの眺めも気持ちの良いものでいた。さらに、トイレは男女ともすべて広い個室(身障者用トイレのような仕様)になっていて、大変使いやすかったのです。

これらはすべて、設計のコンセプトそのものが入院患者目線で考えられていたことを示すもので、本当に感心させられました。実際、この病院には全国の医療関係者が視察・見学に訪れているようです。

また、リハビリ関係にも力が入っているようでした。リハビリテーション室は、少し狭めの体育館ぐらいの広々とした空間で、何人もの入院患者が同時に、他を気にすることなく、リハビリに取り組めるようになっていました。スタッフの数も多く、私のリハビリにも二人がほぼ毎日のように付き合ってくれていました。(多分、この病院を新しくした際に人員も増強したものと思われます。)

もうひとつ驚いたのが、最新鋭のMRIです。MRIというと、工事現場のような騒音で、ヘッドフォンをしていても、なお、うるさくてたまらない、というのが一般的なイメージですが、最新鋭のものはまったく違いました。騒音がまったくしない上に、ずっと環境音楽が流れ続けており、しかも目の前をアニメ化された魚が気持ちよさそうに泳いでいるのです。私はあまりにも気持ちよくて途中で寝てしまい、技師の方に「大丈夫ですか?」と起こされたぐらいです。後日、友人の医師から聞いた話では、「サイレント・スキャン」という機械で、大変高価なため、まだ導入している病院は数えるほどしかない、とのことでした。他の検査機械や治療機器についてはわかりませんが、MRIの例を見ただけでも、かなりの予算が投入されたことは想像できます。

ただ、病院全体がとても広いうえに、エレベータが何基もあって、その行き先が微妙に異なっていたため、なかなか何がどこにあるのか把握できなかったのがちょっとした「玉にキズ」でした。(と言うほどのものではありませんが、まだ使い始めて日が浅いせいか、病院のスタッフも時々混乱しておられました。)きっと迷子になってしまう患者さんもいるのではないか、といらぬ心配をしてしまったものです。

 

さて、こうして快適な環境の中で入院生活を続けた後、私は5月の末に無事退院することができました。自分では、やっと家に帰れる、という感じでしたが、ずっと見てくれた循環器内科の先生や看護師さん、さらにはリハビリ担当の方々からは、口々に「驚異の回復力」とか「奇跡の復活」とか言われたものです。まあ、それだけ、運び込まれた時の状態が深刻だったということですね。

 

ところで皆さん、ICUってベッドから降りることも禁じられている、ということ、ご存じですか? もちろん患者の安全を考えてのことでしょうが、すべての面倒は看護師さんが見てくれました。まだ自分でうまく箸が使えないときは、スプーンで一口ずつ食べさせてもらいましたし、体を拭いたり、シャンプーやリンスしたり、というのも全部まかせっきりでした。まあ、楽だといえばそれまでなのですが、あんまり長くいるところではないですね。ちなみに、私はフロアの一番奥にある広い病室に入れられていたのですが、無駄に広い空間をただベッドの上から眺めている、というのは本当につまらないものです。あの部屋は、多分政治家や要人、あるいは企業経営者が入ることを想定しているのではないか、と思います。たまたま空いていたから私のような者でも入ることができたのだと思います。ただ、たとえそうであっても、二度と入りたくはないですね。

 

本日はここまで。

病院名は出していませんので、今回の話はどこまで皆さんの参考になるか、わかりませんが、ひとつの「お話」として読んでいただければ幸いです。

ありがとうございました。