明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常40 5年生存率

こんにちは。

 

皆さん、仲秋の名月はご覧になりましたか? 私は十五夜十六夜(いざよい)とも、夜中に、喉がかわいてふと起きた時に、空を明るく照らしているのに気がつき、ベランダに出て10分以上もぼおっと見とれていました。頭の中では、ドビュッシーの「月の光」がずっと流れていましたよ。

それにしても、満月って本当に明るいものですね。昼間のようだ、とまでは言いませんが、ふだんの夜空とはまったく違います。東京や大阪など大都市の都心部にお住まいの方は、あまり気がつかないかもしれませんが、秋の少しひんやりとした空気を明るく照らす月光には、なにか特別なものを感じます。中世ヨーロッパでは、月明かりは人間を狂気に向かわせる、という言い伝えがあったようですが、その意味もなんとなく分かるような気がしますね。英語で月を表す言葉であるルナ(luna)は、ローマ神話に出てくる月の女神ルナを語源としていますが、この女神、どことなく陰鬱な得体のしれない存在として描かれています。そして、月が常に太陽と対照的な「陰」の存在として扱われるうえに、満ち欠けを繰り返すという不思議な現象があることから、それが人間の精神を錯乱させる怪しげなものとして怖れられたようです。これはまったくの個人的な想像ですが、満月のあまりにも明るい光が、なにかいつもの夜とは違う異常なものを人々に感じさせた、という面もあるのではないでしょうか。今でもlunaticは狂気を表す言葉として用いられますね。

ちなみに、日本の言い伝えでは、十五夜、つまり旧暦8月15日の月だけを見るのは、「片見月」といって縁起の悪いものだとされています。次の十三夜、つまり旧暦9月13日にもお月見をすると良いのだそうです。なぜ十三夜なのか? それは、十五夜の月の次に美しいのがこれだ、とされているからだそうです。要するに、片方だけ大事にしたら、もう一方が気分を害する、というわけですね。ご参考まで。

なお、今年の場合は10月18日が次の十三夜に当たります。

 

さて、月の話が長くなってしまいましたが、ふと気がつくと、私が多発性骨髄腫の治療の一環として、というよりも最重要の治療として造血幹細胞の自家移植を受けてから、ちょうど7年が経過しました。以前にも書いたとおり、最初に告知を受けた時は、5年生存率が20%、平均余命が2年とされていたわけですから、その数字そのものは既に大きくクリアできています。国立がん研究センターの発表している最新データによると、2009年から2011年に罹患した人の5年生存率は42.8%となっていますので、随分治療技術や薬が向上したことがわかりますね。私の場合は罹患したのが2014年ですから、おそらくもう少しアップしているでしょう。ただ、それでも約半数の患者は5年間生きられていない、というのは、やはり重い現実です。そして、今こうして生きながらえていることには、かかわってくださっている医療関係者の皆さんはもちろん、家族をはじめ周囲の皆さんに、いくら感謝してもしきれない、と思っています。この先の事はまったくわかりませんが、あまりあれこれ悩まずに、できるだけ毎日を楽しみながら生きていきたいものです。まあ、この病気以外の原因で死ぬ可能性だって、いくらでもありますからね。医療のさらなる向上には大いに期待しながらも、そのことに囚われすぎない生き方をしていくのが、少なくとも精神衛生上は最善のような気がします。

なお、がん全体の5年生存率は、男性が62.8%、女性は66.9%だそうです。罹患部位によっては、男性の前立腺がん、女性の甲状腺がんのように90%を超えているものもあります。そして、多くの患者は通院で検査や治療を続けながらも、まったく普通に生活を営んでいます。ですから、皆さんの周囲にそうした方がいらっしゃったら、ぜひ普通に接してあげてください。患者は皆、腫れ物にさわるような扱いをされるのが一番つらいのです。

 

今日も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。