明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常68 佐野史郎さんのこと

こんにちは。

 

先日、俳優の佐野史郎さんが多発性骨髄腫に罹患し、現在入院治療中であることを公表されました。最初に公表のあったテレビ番組「徹子の部屋」は残念ながら見ていませんが、彼の公式サイトを見ると、最初に腎機能の著しい低下がみられたこと、その後化学療法等で約2か月を要したこと、現在は造血幹細胞の自家移植治療のため再入院中であるということです。これは、私がたどった経緯とほぼ同じです。ただ、彼が併発してしまった敗血症には私はかかりませんでしたが。

敗血症とは、感染症への罹患をきっかけに、心臓や肺、腎臓など、さまざまな臓器の機能不全が現れる病態のことで、場合によっては、かなり重篤な状態に陥ってしまいます。(重症患者の4人に1人が亡くなる、というデータもあるそうですから、かなり恐ろしい病気です。)あらゆる感染症がその原因となりうるそうで、多発性骨髄腫の場合は、やはり免疫力が低下してしまっていることが大きな要因になるのかもしれません。

佐野さんの場合どの程度の状態であったのかは不明ですが、現在は次の治療段階に進んでいるということなので、おそらく、敗血症そのものによる危機は脱しておられるのだろうと思います。

また、造血幹細胞の自家移植については、このブログの第10回と第14回~第16回に少し詳しく説明していますので、よろしければそちらをご覧ください。

佐野史郎さんと言えば、誰でもすぐに思い浮かべるのが、大ヒットしたテレビ・ドラマ「ずっとあなたが好きだった」ですよね。タイトルを聴いてもピンとこない人でも、「冬彦さん」と言えば、たいてい思い出すはずです。あのドラマでの野際陽子さんと佐野さんの怪演ぶりは本当にすさまじかった。こんなものをテレビ・ドラマで流して良いのか?と思ったぐらいです。

佐野さん自身、このドラマを契機に一気に人気俳優となり、その後もさまざまな映画やドラマでかなり癖のある役を演じていますが、個人的には映画「ゲンセンカン主人」が印象に残っています。漫画家であるつげ義春原作のこの短編映画は、「ねじ式」や「もっきり屋の少女」、「夜が掴む」など一連のつげ作品と同様、日常生活からふとしたきっかけで、何とも形容しがたい幻想的で、そして、じわじわと恐怖感が迫ってくるような世界に陥っていく、というもので、他のどんな小説家にも漫画家にも描けない独特の暗闇を描いたものです。ただ、多くのつげ作品がそうであるように、非常に夢想的、というかつげ氏自身の夢をそのまま作品にしたような趣があり、映像化は非常にむずかしいのではないか、と考えられていました。しかし、監督である石井輝男氏の演出と映像、そして佐野さんの怪しく、そして危うい存在感が、この映画を成功に導いているのです。

 

佐野さんは現在66歳だそうで、身体的に大きな負担が伴う治療は大変だと思いますが、ゆっくりと静養し、寛解の状態を長く保てるようになることを、心からお祈りします。

希少な種類のがんであるためでしょうか。同じ病気に罹患した人の話を聞くと、とても親近感を覚えてしまう今日この頃です。

そういえば、しばらく前に同じ病気への罹患を公表された漫才師の宮川花子さん、最近全然話題に上らないような気がしますが、どうされているのでしょうか。

 

今回も、最後まで読んでくださりありがとうございました。