明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常81 ゼロ・コロナ? ウィズ・コロナ?

こんにちは。

 

ここのところ、毎日のようにコロナ・ウイルスの新規感染者数急増のニュースが報じられていますね。どこまでいけば高止まりするのか、とうんざりしてしまいますが、ヨーロッパの状況を見ると、いったん増加が止まって、減少傾向に入ったように見えても、その直後にまた増加に転じている国がいくつもあります。つまり、なかなか先行きを見通すのは難しいということでしょうね。長い目で見ていくしかないようです。

そんな中で、北京オリンピックの開幕(2月4日)が近づいてきました。中国政府はこれを何としてでも予定通り開催するべく、かなり強硬なコロナ対策を実施しているようです。いわゆる「ゼロ・コロナ」政策です。

報道によると、香港では、ペットのハムスターを通して人間が感染した可能性がある、とのことで、ペットショップで飼われていた数千匹のハムスター殺処分が決定されたとのことです。また、チンチラ、ウサギ、モルモットなどの小型哺乳類を「予防措置」として殺処分することも発表されています。このハムスターはオランダから輸入されたとのことですが、動物から人間への感染が確定しているわけではないにもかかわらずです。

また、北京では患者の感染源がカナダからのエアメールである可能性がある、として警告を発しています。こちらも、関連性が証明されているわけではありません。そもそも、紙に付着したウイルスが、死滅せずに、大陸と海をまたいで中国にまで到達するというのは、あまりにも非現実的です。

このふたつの事例を見るだけでも、現在の中国政府がコロナ・ウイルスを抑えるためにかなりヒステリックになっていることがうかがえます。まあ、「日本はオリンピック開催を1年遅らせたが、わが中国は予定通り開催できる。それだけ、保険行政が優れているのだ。」と言いたい気持ちはわかりますが。

そもそも世界中でこれだけ感染拡大が続いている中で、「ゼロ・コロナ」などということが本当に可能なのか、というと、それは理想かもしれないが、まず無理だろう、と断じざるを得ません。

これまでに人類が完全に撲滅させることができたのは、天然痘だけです。かつて猛威を振るったこの病気ですが、WHOによる根絶計画が成功し、1977年ソマリアにおける患者発生を最後に、地球上から消え去りました。その後2年間の監視期間を経て、1980 年5月WHO は天然痘の世界根絶宣言を行ったのです。

天然痘のウイルスを撲滅できたのには、3つの大きな要因があるそうです。

(1)天然痘は不顕性感染が少ない。

天然痘ウイルスに感染すると皮疹をはじめとした明確な症状が出るため、知らないうちに感染して他人にうつすようなことがありません。

(2)天然痘ウイルスはヒト以外に感染しない。

インフルエンザウイルスのように鳥や豚にも感染できるウイルスだと、ヒトの集団から一掃してもまた動物から感染してしまいますが、天然痘はそういうことがありません。

(3)天然痘には有効性の高いワクチンがある。

イギリスの医師、エドワード・ジェンナーが開発した種痘を改良した天然痘ワクチンが用いられました。

 

逆の言い方をすると、こうした条件がそろわないと、ウイルスを完全に撲滅することは困難だということになります。だからこそ、数多ある感染症で、地球上からなくすことができたのは一種類だけ、ということなのです。

新型コロナ・ウイルスの場合、これらの条件のうち(3)は今後の研究の進展で可能になるかもしれません。(現在のワクチンは、「短期間に開発された割にはよくできている」というレベルで、皆さんもご存じのように新株に対する有効性はまだ評価が分かれるところです。)しかし、(2)に関してはまだはっきりと解明できていません。そしてもっとも厄介なのが(1)です。気がつかないうちに感染したり、他人に感染させたりしてしまうという可能性があるからこそ、このウイルスは蔓延してしまっているわけですね。

こうし整理してみると、「ゼロ・コロナ」がいかに実現不可能な方針であるかは、誰にでも理解できることです。中国のように強引のこの政策を進めると、さまざまな弊害やあつれき、社会分断が起きてしまうかもしれないのです。

今取るべき方策は、むしろ「ウィズ・コロナ」だということは明らかなのです。

既に、いくつかの国ではこの方向にしたがって政策が打ち出されています。例えばイギリスでは、新規感染者数が少し減ったことを受けて、屋内の公共施設でのマスク着用の義務など、規制の多くを撤廃する方針を明らかにしています。以前の社会生活になるべく近い形に戻していこうということで、これは「ウィズ・コロナ」の方針に基づいているものでしょう。新規感染者数や死亡者数だけを見ると、まだまだ油断できないレベルなので、これはかなり思い切った政策と言えますね。

日本でも、このような方向を目指すべきだという議論は少しずつ大きくなってきています。コロナ・ウイルスが日本に上陸してから早くも2年。人々が疲弊してしまうよりは、多少のリスクを背負いながら、現状を受け入れていくタイミングとしては、悪くないでしょう。

何よりも大事なのは、なるべく冷静に、そして落ち着いて、今後の経緯を見守っていくことだと思います。もちろん、できる範囲での感染予防対策は必須ですが。

 

今回も、最後まで読んでくださりありがとうございました。

今週は2回とも少し硬い話だったので、次回は気楽な話ができればいいな、と思っています。