明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常109 免疫力の話

こんにちは。

 

今回は、まず前回の補足からです。それは沖縄音階に関連することです。

沖縄民謡等はたいていの場合「レ」と「ラ」を使わないとご紹介しましたが、これはもちろん、西洋の音階に無理やり当てはめて五線譜に書き起こした場合の話です。実際には、西洋音階には出てこない中間的な音も出てきますので、聴き方によっては、それが「レ」や「ラ」に聴こえる場合はあります。民謡というものがもともと西洋音階や音楽理論に基づいて作られているわけではないのですから、これは当たり前ですね。

ついでに書いておきますと、日本本土の民謡やわらべ歌の多くは、「ファ」と「シ」がほとんど使われていません。この2つの音は「ド」から数えてそれぞれ4番目、7番目になるので、俗にヨナ抜き音階とも称されます。もちろん、これも西洋の音階に当てはめれば、ということです。このような音階に慣れ親しんでいた明治時代初期の日本人は、西洋音楽になかなか馴染めず、とくに音階を歌わせると、「ド・レ・ミ」までは正確に歌えても、「ファ」になると急にまったく音程が取れなくなった、という逸話がありますが、本当なのでしょうか?? ただ、仮にこれが本当だとすると、明治時代後半には、日本人の作曲家によって次々に西洋音階に基づく曲が作られていたのですから、日本人の順応力はたいしたものだ、ということになるのかもしれませんね。

さて、少し呑気な話題を取り上げてしまいましたが、そんなことをしているうちに、このブログでも紹介した、私と同じ多発性骨髄腫の治療を行っている宮川花子さん、佐野史郎さんが、復帰に向けて着実に歩みだしておられるようです。

佐野さんはロックバンド「くるい」のプロモーション・ビデオへの出演を手始めとして、体調に留意しながら役者としての仕事に復帰していく予定だそうです。また、宮川花子さんは先日行われた吉本興業の大きなイベントで舞台復帰されて、リハビリが続く中、以前と変わらないパワフルな「しゃべり」を披露されたようです。

お二人ともまだまだ体調と相談しながらの仕事、ということになるでしょうが、とにかくめでたいことです。ただ、この病気に「完治」と言う言葉は今のところありません。また、体力や免疫力の低下もありますので、くれぐれも無理をなさらないように、と願うばかりです。私の経験からも、「油断大敵」ということだけは強く言えます。なお、私が退院直後に肺炎にかかってしまい、わずか数日で病院に逆戻りする羽目になった顛末は、このブログ第17回(2021年7月14日)に書きましたので、よろしければご覧ください。

ところで、現在の私ですが、体調に大きな変化はないものの、通院するたびに行っている血液検査でひとつ気がかりなことが出てきています。それは体内に細菌やウイルスが入って、深刻な影響をもたらすことを防ぎ、これを排除するという重要な機能を持つ免疫グロブリン(ig)というたんぱく質の値があまり上がってこない、つまり簡単に言えば免疫力が低下したままである、ということです。igにはいくつかの種類があるのですが、私の場合、igGという、抗原に対する抗体を作るうえで最も重要なものの値がとくに低いようです。

igGは、血液中に最も多く存在し、量的には免疫グロブリン全体の約80%を占め、液性免疫の主役です。図に示すように、それは2本の軽鎖〔けいさ〕と2本の重鎖〔じゅうさ〕が結合したY字型をしています。このY字構造は、角度で0から180度近くまで開閉でき、大きな細菌・ウイルスとの結合にも柔軟に対応できます。ツノのようになっている先端部分(抗原結合部=Fab部)で細菌やウイルスなどと結合し、それら病原体の動きを止めるわけです。ここの作用を「中和」と呼んでいます。

igG  日本血液製剤協会ホームページより転載


悪性腫瘍、とくに血液系のガンや急性感染症などに罹患した場合は、それをなんとか抑えようとして、igGは非常に高い値になってしまいます。つまり、こうした病気の指標としてもこの値が使われるのです。逆に低い場合は、免疫不全、つまりさまざまな感染症へのリスクが高くなるのです。

ではどうするのか、というと、幸いなことに皮下注射によってこれを補充する、という比較的簡便な方法があるのです。そんなわけで、次回(来週)の通院から、おおむね1ヶ月に1回、免疫グロブリン補充療法として、ハイゼントラという薬剤の注射を受けることになりました。注射ですから、自分でやらなければならないことは特にないのですが、1回の注射40~50分かかるそうで、またまた病院滞在時間が長くなってしまうようです。(本当は、自分で注射するという選択肢もあるのですが、もちろんそれなりのトレーニングが必要です。すでに定期的に通院している人の場合は、ほとんどの人が病院で打ってもらっているそうです。)、

説明書を読む限り、大きな副作用等はあまりみられないようですが、どうなることやら・・・これについては、またこのブログでご報告します。

たいていの病気で怖いのは、その病気そのものというよりは、感染症や合併症によって、思わぬ形で体調が悪化することです。新型コロナ・ウイルスもまだ落ち着きを見せる、と言えるまでには患者数が減っていない現状ですし、気をつけていきたいものです。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。