こんにちは。
ニュースを見ていると、相変わらずあまり楽しくなれない話題ばかりが取り上げられていて、しかも最近は、その分析の仕方も各社ほとんど同じようになっています。正直なところ、だんだん見る気が失せてくる今日この頃です。皆さん、ちゃんとニュースは見てますか?
ニュースではなく、20世紀の歴史を振り返る感じの番組ですが、現在NHK総合テレビで「映像の世紀:バタフライ・エフェクト」という番組を月曜22時から放送されています。「映像の世紀」という番組は、もともと20世紀にあった様々な社会的事象を貴重な映像とともに振り返り、そこから歴史の重みを感じさせる番組で、NHKとアメリカABCの共同制作でした。1993年から定期的に放送されていたのですが、ジャズ・ピアニスト加古隆さんの作曲・演奏した「パリは燃えているか」が印象的であったこともあって、大変評価が高かったのです。何回か再放送されましたし、DVDにもなっています。また、再編集した番組も放送されています。おそらくご覧になった方もたくさんおられるでしょう。
ちなみに、「パリは燃えているか」という曲は、既に敗戦濃厚となっていたヒトラーが1944年に、占領していたパリの街を「敵に渡すくらいなら灰にしろ。跡形もなく燃やせ!」というめちゃくちゃな指令を出したにもかかわらず、当時パリ軍事総督を務めていたコルティッツ司令官は、それを得策ではないと考え、無視し続けたことに痺れを切らして、ベルリンから「Brennt Paris ?(パリは燃えているのか?)」と叫んだ、という逸話に触発されて作曲したものだそうです。なんとなくですが、この番組の主旨・雰囲気にとてもフィットした曲で、これを機会に加古さんがジャズ・ファン以外にも注目されるようになったのは納得できるところです。
少し話がそれましたが、今年4月から放送されている「映像の世紀:バタフライ・エフェクト」という番組は、同じような趣旨をもちながら、その時代の荒波の中で生きる個人をクローズアップした内容となっています。といっても、一人の有名人の生涯をただ追いかけるだけでなく、歴史の流れで翻弄され、あるいは抗い続けた個人(あるいは複数の人々)の行動を、重要なトピックスとの関係に触れながら考察していくというものです。例えば、近頃退任したドイツのメルケル前首相を取り上げた回では、彼女が東ドイツで一介の物理学者としてのキャリアを歩み始めた頃の話から、政治に目覚めた話、ベルリンの壁崩壊前後の彼女の行動とその後を紹介するだけでなく、彼女が政治に目覚めるきっかけのひとつにもなっている歌手ニナ・ハーゲン、これとは別に、デモで東ドイツでの自由を訴えた学生のカトリン・ハッテンハウワーといった人たちの活動や運命をそこに絡めながら、とても見応えのある番組になっていました。メルケルは、退任する際に軍楽隊にニナ・ハーゲンの曲の演奏を依頼したのですが、ポピュラー曲を演奏したことのない軍楽隊は非常に慌てた、などというほっこりするエピソードも織り交ぜられていて、歴史にさほど興味のない人でも、途中で見飽きることのないつくりになっていました。
もちろん、放送時間の都合で重要なエピソードが省略されていたり、やや一方的なものの見方になっているかな、と思ったりするところもありますが、そういったことを差し引いても、見る価値は十分あると思います。
これまでに既に6話が放送済みですが、オンデマンドやNHKプラス(見逃し配信)で視聴することはできると思います。見逃した方、お勧めします。
なお、バタフライ・エフェクトとは、もともと力学系の用語で、ある状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の状態が大きく異なってしまうという現象 を指すそうです。
なぜ「バタフライ」なのか、というと、気象学者エドワード・ローレンツの「ブラジルの一羽の蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こすか?」という問いかけに由来しています。
具体的にみていくと、
ブラジルで一羽の蝶が羽ばたく。
→ 小鹿がその様子に興味を持ち、何度も飛び跳ねる。
→ ライオンがその様子に気づき、小鹿を狙い近づいていく。
→ ライオンに気づいたシカの群れが逃げ惑う。
→ それが大きな風を起こす。
→ 海に向かった風が上昇気流をつくる。
→ 竜巻が発生する。 という流れになります。この例だけ見ると、何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいに思えてしまいますが、大事なのは、当初の予想や想像を超えて(というより、予想する価値さえないと思われたような小さな動き、と表現した方がよいかもしれません)大きな変化が生じることがある、ということでしょう。
この番組では、個人の行動をここでいう「わずかな変化」と位置付けて、それが歴史の大きな潮流にもたらす影響が、本人の想像を超えて大きくなることがあるのだ、という思いが、番組タイトルに込められているのでしょうね。単に現代世界史の「学び直し」として視聴するだけではなく、そのような製作意図を噛みしめながら見るべき番組なのかもしれません。
なんだか番組宣伝みたいになってしまいましたが、番組表を注意深く見ていると、まだまだこうした良質の番組が作られていることがわかり、何だかほっとします。ちなみに、5月23日放送予定のテーマは「スターリンとプーチン」となっています。これも興味深いですね。
今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。