こんにちは。
一昨日は血液内科の診察・治療のための通院でしたが、前々回の投稿でお知らせしたように、予定通り、免疫ブログリン補充療法(免疫力を上げる治療)であるハイゼントラという薬剤の注射を受けてきました。それ以外にも、いつものダラキューロの注射治療もあり、その両方が腹部への皮下注射でした。ただ、腹部はあまり細かい神経は通っておらず、痛みはほとんどありません。ハイゼントラは45分血殿長い時間をかけての注射(もちろん手動ではなく、電動ポンプを用います。そんな長時間の注射、手動で行ったら、看護師さんの過重負担になってしまいますよね。
まあ、そんなわけで治療は問題なく終わり、今のところ目立った副作用も出ていません。効果があったかどうかは、次回(来月)の検査結果を見ないとわかりません。
ところで、医療機関における治療にはさまざまな薬剤が必要なことは言うまでもありませんが、昨年ごろからその供給体制等について、ちょっとした問題が表面化しているのはご存じでしょうか。それはジェネリック医薬品をめぐる問題です。以前も少しご紹介しましたが、ジェネリック医薬品とは、「新薬(先発医薬品)」の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分・品質・効き目・安全性が同等であると国から認められた薬品で、後発医薬品とも呼ばれます。先発医薬品は、長い年月(通常10 ~ 15 年)と、数百億円以上といわれる費用をかけて開発されるので、これを開発した製薬会社は、特許の出願によりおよそ 20 ~ 25 年間(特許期間)その薬を独占的に製造・販売する権利が与 えられます。もちろん、この期間を超えても信頼度の高さやその他の要因によって生産され、売れ続ける薬品もたくさんありますが、途中で開発を断念し、先行投資が無駄になってしまうこともよくあるようです。
他方で、後発メーカーが同じ成分によって「ジェネリック医薬品」を販売するケースも多い、と言うことになります。ジェネリックの場合は、開発費用が格段に低く抑えられることから、価格もかなり抑えられることが、普及の大きな要因でしょう。
国から認められている薬品の価格は、そのまま国の負担する社会保障費にもかかわってきますので、国(厚生労働省)としては、少しでもジェネリック医薬品の普及拡大を推進したいところなのです。その背景には、日本の財政支出に占める社会保障費、とくに医療費の割合が年々増大していること、そして下の図にあるように、約10年前には諸外国に比べて日本に対応がかなり遅れていたことが挙げられます。
厚生労働省は、2020年9月までに、その使用割合を80%にするというかなりハードルの高い目標を掲げたのですが、その後、このような薬品を製造するメーカーが急増したこともあり、日本のジェネリック普及率は、下図のように急激に上昇して、今に至っているのです。ただし、国民医療費に占める薬剤費の比率は22.0%程度で、であり、2000年代半ば以降安さほど変化していないそうです。これは主に、医療そのものがどんどん高度化していることに依るものとでしょう。いわゆる高度医療には、ジェネリックはあまり関係しません。
さて、ジェネリックに話を戻しましょう。現在、これについては、いくつかの不安・懸念材料があります。
ひとつは、その効果についてです。ジェネリックの有効成分そのものは先発のものと同じですから、基本的にはその効果には差はないはずです。しかい、有効成分以外の添加物には各社で違いがあるようです。添加物は主に有効成分のコーティングに使われますが、それによって、思わぬ副作用が出たり、効果が弱いと感じたりすることがあるようです。ただし、薬品の効き方には個人差があるため、一概にジェネリックは品質がイマイチと言うことにはなりません。こればかりは、実際に使用している患者が感じたことを素直に医師に相談して、解決していくしかないでしょうね。
ただ、昨年あたりからその品質そのものの信頼性を揺るがす事件が立て続けに起きています。それは、小林化工(福井県)、日医工(富山県)2社で、相次いで、未承認薬品の混合、査察に備えての品質検査に関する二重帳簿の作成、本来の手順として認められていない手法による検査の状態か等の不正が見つかり、長期間にわたる業務停止処分を受けたことです。これに端を発し、いくつかの他メーカーでも不正が発覚し、いずれも重い処分が下されています。この一連の事件を受けて、業界全体が検査体制の見直しを徹底することが求められるに至ったことは、ジェネリックにとって大きな痛手となった事は言うまでもありません。
問題はこれにとどまりません。このことによって、昨年頃からジェネリック医薬品の供給体制をめぐって、いくつかの大きな問題が出てきているのです。とくに日医工は業界トップの規模を誇る企業であったため、その事業停止の影響は極めて大きいものとなりました。
これに追い打ちをかけたのが、2021年12月に大阪で起きた4日間にわたる大規模な倉庫火災によって、多くの医薬品が肺となってしまったことです。もともと、この業界には比較的規模の小さな企業が多いため、生産体制、流通ルートともにさほど確固たるものではなく、こうした事件が立て続けに起きると、あっという間にその影響は大きくなってしまうのです。またたくまに市場では「ジェネリック医薬品不足」が起き、市場末端である町の薬局では、「薬の奪い合い」が加速化してしまいました。そしてそれは、当然ながら、これを利用する私達にも少なからぬ影響をもたらしたのです。
厚生労働省は、各社に生産増強への協力を求めており、それに応じる姿勢を見せているところも多いようですが、原材料仕入れの見直しや自社の製造体制の再構築、場合によっては新規工場建設等が必要となるため、この問題はそんなに簡単には解決しないようです。もともと、生産コストが安いことを最大の魅力と感じていた企業にとっては、検査体制の件も含めて、前向きに対処することに若干の躊躇を覚えている所もあるかもしれません。
私はジェネリック医薬品やそれを製造するメーカーそのものを問題視するつもりはまったくありません。ただ、一般論として、どのような業界にでも言えることなのですが、急速な発展拡大には、その成功要因を分析して、もてはやすだけではなく、どこかで無理が生じているのではないか、何か暴かれては困るようなことが潜んでいるのではないか、という目を持つことも大事だと思うのです。
今回は、かなり理屈っぽい話になってしまいました。最後まで読んでくださった方には、感謝申し上げます。