明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常118 リモート・ワークはアリか?ナシか?

こんにちは。

 

前回は自動車の将来に関しての投稿となりましたが、実は、私は免許すら持っていません。そういう個人的な立場から言わせてもらえれば、公共交通がしっかりと維持されて、多くの人に利用される事こそが、望ましい将来、ということになります。最近は、過疎化の進む地域を中心に、鉄道やバスの路線廃止が続いていますが、これはますます過疎化を助長するものではないか、と憂慮しています。なるべく維持・管理コストがかからない、そして住民のニーズに細やかに対応できるような小回りの利く交通機関が開発、普及されていくといいのですが。例えば、一部の地域で導入が始まっているオンデマンド・バス(乗車希望があった時だけ運行される小型のバス)などは、ひとつの方向性かもしれません。高齢者の免許返上を促進させるためにも、どのようなシステムが使い勝手が良いのか、真剣に議論するべき時代はすでに来ているのです。

 

この件については、もっと真剣に考えていく必要がありますが、今回はそのことではなく、前回ご紹介したテスラ社のマスク会長の別の発言を取り上げたいと思います。

マスク氏は先ごろ全従業員に対し、「リモート勤務を希望する人は週に最低40時間オフィスで勤務しなければならない。さもなくばテスラを退社してもらう。」という通達を出したそうです。週40時間といえば、日本でもアメリカでも標準的な勤務時間数ですから、これは実質的に「リモート・ワーク禁止令」ということになります。つまり、近年急速に進んだリモート・ワーク(在宅勤務など)を真っ向から否定したわけですね。彼は、物理的に存在する職場で働くのに比べて、それが効率的にも生産的にもなり得ないと主張しているそうです。

私はこの記事を読んで、最初非常に意外な気がしました。テスラという新興企業で、しかも最新技術を武器とする企業のトップとしては、ずいぶん時代遅れの考え方だな、と思ったのです。ちなみに、日本のデータになってしまいますが、今年4月現在で、従業員30人以上の東京都内企業においては既に約3分の2がリモート・ワークを実施しているそうです。しかし、彼はツイッター上で「仕事のためにオフィスに行くというのは時代遅れの概念だと考える人に何か伝えることはあるか」と問われたところ、「そうした人は、どこかよそで働くふりをすればよい」と皮肉交じりに答えており、反リモート・ワークの姿勢はかなり明確なようです。どうも、会社の目の届かないところにいる従業員は「何をしているかわからない」という疑いの目で見ているようです。

たしかに、例えば自宅で仕事をしている、と主張されても、それを逐一管理することは、会社側に不可能です。しかし、毎日オフィスまで出向かなくてもよい、ということは通勤に要する費用、時間、そしてエネルギーが温存され、他に回せるようになるため、これを推進してほしいという声はよく聞きます。社会全体としても、道路の渋滞や電車の混雑を緩和できることになるのなら、前向きに取り組むべき課題と言えるでしょう。

また、もっと本質的な問題として、「働き方・働かせ方」そして「会社への貢献の評価」のあり方を問い直すのが、リモート・ワークなのです。

現在、企業での従業員に対する評価は、勤務時間ではなく、その内容、つまり成果(必ずしも目に見える結果だけではありません)によって行う傾向が次第に広まっています。もちろん、これにも色々課題は山積しており、その最大のものは「どうやって成果を測定するのか?」というものです。また、評価の結果について、従業員が納得できるような仕組みづくりにも工夫が必要です。例えば、丁寧な説明・議論と、従業員側から反論や疑問があった時には、これに真摯に対応することが求められます。しかし、それには評価する側、つまり管理職側の負担は大変重くなってしまう、という副次的な問題も発生しています。

さらに、評価結果をその人の処遇や賃金などにどのように反映させるのか、ということも大きな課題です。ある時点での評価が低くても、それをリカバーすることのできるような配慮も必要とされています。

ただ、それでも「やれるところからやっていこう」というのが最近の流れでしょう。では、なぜ今回のような通達がなされたのでしょうか?

ひとつには、企業内での制度のバラつきによる不平不満を抑える必要があったのかもしれない、ということが考えられます。実はマスク氏も少し指摘しているのですが、工場で働く労働者など、リモート・ワークを行うことが不可能な部門がある場合、従業員間で不平不満が発生することは十分予測できます。自分は毎日出勤しなければならないのに、他方で会社にほとんど顔を出さない同僚がいるとしたら、あまり良い気がしない人がいても不思議はないですよね。

もうひとつは、リモート・ワークばかりになってしまうと、仕事を進めていく上での組織としての一体感はどうしても失われがちになることが懸念されます。コロナ禍で在宅での仕事が増えた結果、同僚と雑談する機会も減ってしまい、「一緒に仕事をする」という感覚が薄れてしまった人が多いことは、すでに多くの会社で報告されているとおりです。(ただし、テスラの場合、そのようなチームワークを主体とした働き方をしているのかどうかは不明です。)

テスラ社での人事評価がどのように行われているのか、私は全く知りませんが、まさかマスク氏も「オフィスに出社してさえすれば、ちゃんと働いてくれる」と安直に考えているわけではないだろうと思います。色々とウラの事情はあるのかもしれませんが、上に書いたふたつが大きな要因ではないのかな、というのが私の想像です。(まあ、リモートをいっさい認めないというのは、どう考えても行き過ぎですが)

 

インターネットは本当に便利なモノで、この2年間もそれによって社会は何とか回っています。ただ、対面で進められる直接的なコミュニケーションがあることによって、ヒトは相互に高め合うことができますし、仕事の質そのものも向上するはずです。

私達は、ネットを通じてできること、ネット経由だからこそできること、そしてその限界を整理していくことが必要なのでしょう。ちなみに、私が以前インタビューしたある中小規模の建設会社では、ウェブ・カメラやZoomなどを最大限活用することによって、現場と管理部門のコミュニケーションを進められるよう、腐心しているそうです。「建設業だからリモートでは何もできない」と言ってはいられない、ということでした。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。