こんにちは。
新型コロナウイルスの感染拡大がとまりませんね。ここのところ、さまざまなイベントが開催されていたことも一つの要因かと思いますが、今回の変異種の感染力は驚異的なようです。とくに若年層の感染が増えているということで、そこから家族への感染がどんどん広がっているとの見方もあります。
実は、私もちょっと影響を受けています。本当は、来週週末、学会のため東京に出かける予定があり、ホテルも確保していたのですが、自身の免疫力の問題を考慮して、断念することにしました。まあ、学会そのものは「ハイブリッド方式」で開催されることになりましたので、自宅にいても参加はできるようです。でも、なんだか萎える話ですね。
さて、少し気を取り直して、今回は久しぶりに音楽の話です。とは言っても、クラシックではありません。
先日、地上波のテレビで「LOVELOVあいしてる 最終回」という番組がありました。この番組は、もともと1996年から2001年まで放映されたのですが、大変評価が高かったのか、その後数回特別番組が放送されています。
この番組が特徴的だったのは、放映開始当時まだ17歳だったKinKi Kids(堂本光一、堂本剛・・・彼らはまだレコード・デビュー前でした)および篠原ともえさんという、非常に若いタレントをメインに据えるとともに、その共演者として、吉田拓郎さんを据えたことでした。Kinkiの二人は、その後ジャニーズ事務所の看板タレントになり、最近ではソロでも精力的に活動しています。そして篠原さんは、当時はキャピキャピ・キャラの「シノラー」として一世を風靡していましたが、今ではすっかり大人の女性になったばかりか、日本を代表するファッション・デザイナーの一人に数えられるようになっていることは、ご存じの方も多いでしょう。
この当時、吉田拓郎さんがテレビ番組に出演することはめったになく、ましてやバラエティ番組に毎週出演して、若い他の出演者と絡む、ということで、それだけで、もう大きな話題となったものです。後日談として、彼は、「やるのなら超一流のミュージシャンを揃えて、毎週ちゃんと演奏させることを条件としたら、本当に実現してしまった。」と語っています。たしかに、そのミュージシャンはとてつもない大物ばかりで、名前を上げれば、キリがないほどです。彼らがちらっと映るのだけを楽しみにテレビを見ていた人も多いそうです。(私がこの番組を見始めたきっかけもそれでした。)
そんな番組が今回「最終回」と銘打って放送されたのは、吉田拓郎さんが自身「最後になる」というアルバムを発表するとともに、「テレビへの出演もこれが最後」と宣言し、その最後にこの番組を選んだからのようです。彼によれば、「50歳台からの自分は、この番組の共演者たち3人のおかげで充実したものになったし、色々と教えられた」と語っています。そういう理由で、あえて歌番組ではなく、バラエティ番組を選んだ、というところに色々と感じさせられるところがあります。実際、今回の番組の中で、彼はこれまではごまかして語らなかったような本音を色々と語っていました。
さて、吉田拓郎さんと言えば、私達の世代にとっては、まさにリアルタイムで色々な歌を聴いてきた、レジェンドの一人です。さほど熱心なファンではなかった私でも、かなり多くの曲を知っていますし、歌えるものも少なくありません。そんな彼が、いよいよミュージシャンとしての終わりを迎えつつあることは、大変感慨深いものです。彼は1946年生まれですから、今年で76歳ということになります。歌手引退の年齢としては決して早すぎることはないのかもしれませんが、テレビでその声を聴く限り、まだまだやれそうなのに・・・と思ってしまった人は多いはずです。番組の中でも、「すぐに復活するんじゃないの?」という声が、泉谷しげるさん他から多く寄せられていました。
しかし、彼の最後となるアルバムのタイトルが「ah-面白かった」だと知った時、私は、この人は本気なのだな、と思いました。これって未練を残している人のセリフじゃないですよね。ラジオ出演やこれまでのライヴの発表などはあるかもしれませんが、おそらく新譜を作ることはないのでしょう。
今の拓郎さんを見ていて感じることが二つあります。
ひとつは、「引き際」について。上にも書いたように、彼にはまだ体力的には余裕がありそうです。にもかかわらず、というか、だからこそ、今のうちに自分で幕を引く、醜態はさらさない、という彼の生き方、そしてそこに通底する美学があるように思うのです。
ぼろぼろになるまで現役を続けるのか、それとも花のあるうちにリタイアするのか、というのは誰にでも選択を迫られる時期があるはずです。個人によって価値観は異なりますから、どちらがよいのかという答えは安直には出せませんが、少なくとも自らの意志でそれを決めることができるだけでも、幸せなのかもしれません。
もうひとつは、上にも書いたある程度以上の年齢になってから「年下の連中に教わった。今の自分があるのは彼らのおかげだ。」と言い切ることができる潔さです。人間誰でも、自分の積み重ねてきた人生にはそれなりの自負があるでしょうから、とくに歳を重ねれば重ねるほど、こういうことをはっきりと言いにくくなってしまうような気がします。このあたりに、拓郎さんの「カッコよさ」があるような気がするのです。
最後に、私なりの拓郎ベスト3ソングを挙げておきましょう。といっても、さほど多くの曲を知っているわけではないので、偏りがあることはご容赦ください。
1「落陽」・・・吉田拓郎と言えば、この歌でしょう。詞は岡本おさみ氏によるものですが、詩曲、歌い方、アレンジすべてが「拓郎節」に溢れています。イントロだけで泣けてくる人もいるほどです。
2「雪」・・・拓郎さんが「猫」というフォーク・グループのために作った曲ですが、自分でも歌っています。「落陽」とは異なり、とても繊細な、そして内省的な世界が印象的です。拓郎さんの「アナザー・ワールド」でしょうか。
3「今日までそして明日から」・・・ほとんど展開らしい展開のないメロディ、そして同じような言葉が繰り返される詞。にもかかわらず、じっくりと味わうと、実に深い内容を含んでいる佳曲です。
番外編「永遠の嘘をついてくれ」・・・これは中島みゆきさんの作詞作曲です。拓郎さんが一時大変落ち込んでいたときにみゆきさんに曲を書いてくれるよう依頼したところ、思いきり背中をけ飛ばすような曲が仕上がってきたということのようです。この二人、一度だけ(多分)ステージで協演し、この歌を歌っています。私はたまたまテレビで見たのですが、それはとても感動的な場面でした。今でもネットには残っているかもしれません。
今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。