明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常132 指揮者とリーダーシップ

こんにちは。

 

まだ8月半ばですが、いい加減、暑さに飽きてきましたね。いかがお過ごしでしょうか。

私は、昨日4回目の新型コロナのワクチン接種を受けてきました。過去3回、ほとんど副反応らしきものはなかったのですが、今回も、今のところ少し倦怠感があるだけで、高熱が出たり、腕に強い痛みが残ったり、ということはありません。まあ、これで抗体ができて、少しでも重症化リスクが減ればよいのですが、こればかりは、どうなるかまったくわかりませんね。それにしても、集団接種会場で働いている方々、本当に毎日ごくろうさまです。今の様子だと、まだ数回はワクチン接種をしなければならないことになるのでしょうか。これも正直なところ「いい加減にしてほしい」という気持ちが湧いてきますね。変異種の発生など、むずかしい課題もありますが、一刻も早く特効薬が出てくることを祈るばかりです。

最近、身近な人の中にも罹患する人が続々と出てきていますので、余計にそう思う次第です。

 

さて、前回は指揮者の役割について書きましたが、まずは少しだけその補足を。

指揮者といっても、その与えられている権限はさまざまです。「音楽監督」あるいは「芸術監督」という肩書を与えられ、楽団全体の運営や人事に強い発言権をもつ場合もありますが、他方で、単にある一回の演奏会についてのみ権限と責任を持つ、というパターンもあります。また、ウイーン・フィルのように、基本的にはそれぞれの演奏会について、それを担当する指揮者を団員たちの総意に基づいて決めることを基本とするようなところもあります。指揮者は、自分の理想とする演奏をするためには大きな権限を欲するものですが、当然のことながら、大きな権限には大きな責任が伴いますから、これを嫌がって、あえて軽いポジションに留まろうとする人もいるようです。なかなか複雑な世界ですね。

そして、指揮者を一切置かないオーケストラも存在しています。その代表格がアメリカにあるオルフェウス室内管弦楽団です。「室内」という言葉に違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、これは英語のchamberという言葉を直訳しているのです。たしかにこの言葉には「室内」という意味もありますが、この場合は単に「小規模の」ぐらいの意味だと考えておけばよいようです。弦楽器16名、管楽器10名の計26名を基本とするこのオーケストラは、1972年に創設されて以来、バロック音楽から現代音楽まで幅広いレパートリーを演奏、録音してきていますが、特殊な場合を除いて、一度も指揮者を置いたことがありません。しかし、ニューヨークにある「クラシックの殿堂」とも称されるカーネギーホールを拠点にした活動は、常に高い評価を得てきているのです。

では、この楽団はどのようにして統率をとっているのでしょうか。

実は、ここには指揮者はいませんが、リーダーは存在しています。つまり、団員の中にリーダーがいるのです。ただし、それは固定されたポジションではありません。曲や演奏会ごとに、団員の中でリーダーを回り持ちしていき、その人を中心に、皆で音楽づくりに積極的に参加し、意見を出しあいながら、それをまとめていくのです。言い換えれば、団員の誰もがリーダーになり、またフォロワーにもなる、というわけです。このような体制を長年維持することによって、団員一人一人の音楽に対する姿勢はより真摯なものとなり、同時に、「リードする」ことと「フォローする」ことの両方の立場を深く理解できるようになります。こうして団員の誰もがより高い主体性を持つようになり、結果としては、よりよい演奏が可能になるというのです。少し荒っぽい言い方をすれば、指揮者の言いなりになるような演奏家にはならない、という意志を大事にしているのです。

オーケストラに限らず、どのような組織においても、皆がより高い権限と責任を有する、というのは、おそらくその組織自体が強固なものになっていくうえで、とても有効なことだと思います。

ちなみに、オルフェウスには8つの明確な原則があるそうです。

1 仕事をしている人に権限をもたせること

2 個人として最も質の高い演奏をする、自己責任を負うこと

3 役割を明確にすること

4 リーダーシップを固定させないこと

5 平等なチームワークを育てること

6 話の聞き方を学び、話し方を学ぶこと

7 コンセンサスを形成すること

8 職務へのひたむきな献身があること

 つまり、ここで求められるリーダーシップは、私達がふつうイメージする「強いリーダーシップ」とは随分異なるものなのです。

なお、心理学者であるリッカートはリーダーシップのあり方を4つに類型化しています。それは以下の通りです。

・独善的専制

・温情的専制型(家父長的専制型)

・相談型

・集団参加型(民主型)

いわゆる「強いリーダーシップ」は①または②でしょう。前回の投稿でご紹介したトスカニーニは明らかに①です。中小企業の経営者には②のタイプの方が多いのではないでしょうか。そしてオルフェウスの場合は当然④ということになります。

ただ、このようなやり方はどうしても全体で合意するまでに時間と手間がかかってしまいます。限られた時間の中で意思決定し、行動を起こさなくてはならないときには、これが大きな障害になってしまいます。ですから、ある程度以上の規模の組織や、常に外部環境の変化に即応することが求められるところでは、決して向いている方法とは言えません。また、リーダーとなる人の性格によっても、とることのできるタイプは異なってきます。つまり、どのようなリーダーシップがふさわしいのかは、ケース・バイ・ケースということになるのです。ただ、私達は自分たちのリーダーとしてどのような人物が適任なのか、短期的視点と長期的視点の両方をもって、冷静に考えていかなければならないのです。また、フォロワーとしてのあるべき姿についても、しっかりと考えていかなければなりません。フォロワーとは、ただ「後ろをついていく人」のことではなく、冷静かつ客観的な立場から、リーダーをフォローする人のことなのです。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。