明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常150 出雲大社の不思議

こんにちは。

 

さて、今回は山陰観光編その2,誰もが知っている観光スポット、出雲大社についてです。ちなみにここは正式には「いずもおおやしろ」と読みます。

松江から出雲大社まで公共交通機関を利用して行くには、主に2つのルートがあります。ひとつは、JR山陰本線で松江から出雲市まで、そこからバスに乗り換えて行く方法、もうひとつは松江駅からバスで10分ほどの位置にある松江しんじ湖温泉駅から一畑電車というローカル鉄道に乗って行く方法です。鉄道好きな私は両方乗りたくて、往路は後者、復路は前者のルートを使いましたが、とくに、一畑電車の車窓(宍道湖)は本当に素晴らしかったです。(JR山陰本線からも宍道湖はよく見えます。)

この地方鉄道、沿線にさほど大きな町があるわけではなく、経営はかなり厳しいようです。営業係数は150以上となっています。つまり100円稼ぐのに150円以上のコストがかかっているということです。それにもかかわらず、最近になって便数を増発するという「攻めの経営」を展開しており、非大手私鉄の経営の未来を占うひとつのケースとして大きな注目を集めています。

ただ、以前は上に書いたふたつの方法以外に、もうひとつルートがありました。それは、出雲市駅から出雲大社近くまで伸びていた大社線と言う国鉄(のちにJR)を利用する方法です。この路線、長さはわずか7.5㎞という短いものですが、最盛期は大阪や名古屋から急行列車が直接乗り入れるほど賑わった路線です。しかし、利用者数減少により、1990年には廃止されてしまいました。その理由はふたつ。ひとつはモータリぜーションの拡大により自動車で参詣する人が増えたこと、そしてもうひとつは、列車を降りてから大社まで徒歩で15分ほどかかり、バスや一畑電車に比べて少し遠かったということのようです。

ちなみに、大社線一畑電車のいずれも出雲大社の最寄り駅は大変立派で、現在も、その名にふさわしいたたずまいを見せています。

一畑電車出雲大社前駅の構内


さて、沿線の風景を眺めながら1時間強。いよいよ出雲大社に到着です。ここの詳しい解説や神話はあちこちで解説されていますので、このブログでは割愛し、私なりに感じたことや不思議に思ったことだけ、いくつか記しておきます。

門前町にあたる神門通りを抜けて、もっとも目立つ鳥居である勢溜の鳥居をくぐると長い参道が始まるのですが、すぐに気が付くのが、ここが「下り参道」になっていることです。普通、神社の参道は平坦であるか、上りかのどちらかなのですが、ここは本殿に向かって下っています。何故なのか? 理由としては、以下のようなものが考えられています。

・坂を下がることで、参詣者に「へりくだる」ことの大切さを伝える

・「気」や「エネルギー」は鳥居から本殿に向かって流れていくので、それに乗って参拝できるように配慮する

・もともとそういう地形だった

・付近の山を開拓する過程で、下り坂になった

どれも決定的と言えるほど説得力のあるものではありません。なお、神門通りそのものは上り坂なのです。つまり、勢留あたりがもっとも高い地点ということになります。これは本当に不思議ですね。

下り参道


さて、参道を進むとやがて見えてくるのが拝殿、そしてその奥に本殿があります。出雲大社の正式な参拝の方法は、一般的な「二礼二拍手一礼」ではなく「二礼四拍手一礼」と定められており、私が訪れた時は、皆さん予習してこられたのか、そのようなお参りを実践しておられました。ただ、これも理由がよくわかりません。一応あげられている説を書いておきます。

・四季を表し、実りと繁栄を基盤する

・東西南北の四方向を守護する神に敬意を表す

・四は幸せの「シ」である

・人と神の魂、すなわち和魂、荒魂、奇魂、幸魂を表している

うーん。これもわかったような、わからないような説明ばかりですね。そもそもいつごろからこのような風習ができたのかも不明なようです。

さて、もうひとつだけ紹介しておきましょう。出雲大社と言えば、拝殿とその西側にある神楽殿に飾られている大しめ縄です。これは、写真で見たことのある方も多いでしょうが、実物を見れば、その巨大さには度肝を抜かれます。神楽殿の方は、重さ5トン以上で、おそらく日本一のものです。これらは4年から8年に一度付け替えられるそうで、その製作は島根県飯石郡飯南町の「大しめ縄創作館」というところが担っており、すべて地元の方々の人力によって縄を締めているそうです。なぜこんなに大きなしめ縄が飾られるようになったのか不明なのです。そもそも大きさに決まりはないようで、現在のものは2018年に製作されたのですが、その前のものはもう少し小さかったようです。(大社側から、「もう少し大きなものを」という注文がはいったそうです。)ただ、これをずっと受け継ぐことによって、一種の技能伝承が行われていることはたしかです。こうしたことも、大社があることによって地元への還元がなされている一例なのでしょうね。

楽殿の大しめ縄

 

以上、3つの不思議を書いてきましたが、結局のところ、それが生まれた経緯や理由はよくわかりません。というか、曖昧なままにしておくことこそ、大社の神秘性を高めているのだろうと思います。そして、ここを訪れた人は、他の神社とは異なるその佇まいに、特別感、あるいは非日常を感じることができるのです。

そもそも、日本神道に限らず、あらゆる宗教施設は、そこを訪れる人の居住まいを正させるとともに、「来てよかった」という満足感を与えるために、さまざまな演出を施しています。ましてや、伊勢神宮と並んで、あらゆる神社の中でも特別な存在である出雲大社となれば、その必要性は高くなります。その積み重ねとして、現在の姿がある、ということになるのではないか、と思った次第です。

このような不思議な神聖さに包まれた出雲大社ですが、近年は、大衆により親しまれるような工夫もしています。下の写真のようなウサギの石像が、境内になんと61体もあるそうで、とくに若い女性の人気を集めているのです。インスタ映えもしますね。これが「因幡の白兎」にまつわるものであることは明らかなのですが、それにしても、あの話ってこんなに可愛い話だったでしょうか? (笑) 門前にあるお土産屋さんにはハート・マークの付いたウサギのおみくじを売っており、思わず買ってきてしまいました。(笑笑) 来年はウサギ年だし、ますます人気が出るでしょうね。




今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

あと一回、山陰旅行で感じたことを書くつもりです。よろしくお願いします。