明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常153 糖尿病の名称変更をめぐって

こんにち

先日の皆既月食はご覧になったでしょうか。私の住む地域では、夕刻までかなり雲が広がっていたのですが、月が夜空に浮かぶ頃からは晴れ渡って、絶好の「お月見日和」になりましたので、ゆっくりと鑑賞することができました。もちろん、ずっと外に出て見ていたわけではありませんが、月が完全に隠れている間の赤い光は何とも幻想的なものでした。

なお、同時に騒がれていた惑星食、つまり天王星が地球の影に隠れる現象ですが、こちらは望遠鏡や双眼鏡の用意がなければ観察は難しい、とのことでしたので、断念しました。まあ、そもそも大変短い時間の現象だったので、注意深く見ていないと・・・ということだったようですが。

 

さて、今回はまず、最近目についたニュースをひとつ取り上げます。それは、糖尿病という病名を変更することを、関連協会・学会が表明したというものです。

現在、日本における糖尿病患者数は約1000万人、そして年間死亡者数は約1万4000人にも上っています。また、健康診断等でその危険性を指摘しながらも放置している方もかなりの数に上るであろうことを考慮すると、国民の10人に1人が抱えている病気ということになります。糖尿病の恐ろしいところは、その病気そのものだけにあるわけではありません。さまざまな合併症を招く可能性があること、そのためもあって、場合によっては、服用できる薬が限定されてしまうことがある、ということです。死亡者数が多いことは、こうしたことも関係していると思われます。

ところが、「尿」という文字が入っている名前のせいか、糖尿病は「恥ずかしい病気」と考えている患者が少なくないようです。最近の患者を対象にしたアンケート調査によると、回答者の9割が病名に何らかの抵抗感・不快感をもち、名称変更を希望する人が8割に上ったということです。

問題は、それだけではありません。社会の偏見、誤った認識も相当なもので、「生命保険や住宅ローンに加入できない」「就職が不利になった」「怠け者のように見られる」などの声も上がっているそうです。

実際に患者の方々からこのような声があがっているのならば、名称変更は真剣に考えるべきでしょう。

病気の名称変更については前例がないわけではありません。有名なものとしては、「らい病」から「ハンセン病」への変更が挙げられます。時代を遡ると、らい病は「かたい(傍居)」とも呼ばれていたのですが、これは「物乞い」という意味で、この病気にかかった人々が、皮膚にできるひどい肌荒れ・発疹等のために世間から敬遠され、「物乞い」として生きていくしかなかった状況を指しているようです。つまり、明らかな差別意識、忌避感に基づく用語です。このような状況を改める動きが出てきたのは比較的最近のことで、1996年に「らい予防法」が廃止され、この病気の源となる菌を発見したノルウェー人医師アルマウェル・ハンセンの名前をとって、今の名前を普及させることとなったのです。ただ、その後も国による隔離政策は長らく続きます。全国のハンセン病療養所は存続し続け、現在も13か所が稼働中のようです。そして、ハンセン病患者にふりかかる差別やそのことから生じる生活苦を描いた小説や映画は多数作られています。おそらくもっとも有名なのは松本清張砂の器」ですね。

話が横道に逸れてしまいましたが、病気にかかわる誤解や無理解はそれだけ根強いということです。だからこそ、糖尿病の名称変更も早期に解決する必要があるのです。

ただ、ここでは留意しなくてはならないことがあります。

まずひとつは、「糖尿」という名称から多くの人が尿に糖が出ることがそのサインだと思っています。しかし、糖尿病であっても尿糖が出ない場合もあり、逆に、尿糖が出ても糖尿病ではないこともあるのです。名称変更する場合は、このような誤解が生じないものにする配慮が必要ですね。

もう一点。ご存じの方も多いとも思いますが、糖尿病にはⅠ型とⅡ型があります。

1型糖尿病は、膵臓インスリンを出す細胞(β細胞:べーたさいぼう)が、壊されてしまう病気です。β細胞からインスリンがほとんど出なくなることが多く、1型糖尿病と診断されたら、治療にインスリン製剤を使います。

世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われていますから、そんなに少ない数ではありません。なお、若い方を中心に幅広い年齢で発症するようです。

これに対してⅡ型は、遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンの相対的不足に陥った場合に発症する糖尿病です。ですから一般には、生活習慣が関わることが多いとされており、ある程度以上の年齢の方の発症が多いようです。

このように1型とⅡ型糖尿病とは、原因が大きく異なっているのです。当然、治療方法もかなり異なったものとなります。しかし一般的な認識としては、「糖尿病=生活習慣病」といる考え方が広がっているのが現状です。糖尿病といってもさまざまな理由があり、ひとくくりにすることはできないのですから、それぞれに合わせて病名もいくつかに分けて付すべきだと思うのです。(やや煩雑になるかもしれませんが、妙な誤解を生まないためにはやむを得ないと思います。)

 

現代日本に住む私達は、どうしても食生活が乱れてしまう傾向があり、誰でも糖尿予備軍になってしまう可能性がありますがんほどてはないにしても、この問題は身近な問題であり、他人事と考えるべきではないのでしょうね。

 

ところで、私が先週受けたPET-CT検査についてです。細かい説明は省略しますが、多発性骨髄腫については、今のところ気にしなくても良いようです。ただ、左の首筋(おそらくリンパ節)に少し異常かもしれない部分があるため、改めて耳鼻咽喉科で精密検査を受けることになりました。PET-CTでは炎症等も映ってしまうことがけっこうあるそうなので、今のところ原因はまったくわかりませんが、いずれにせよ不安要素が増えてしまったことは確かです。しかしまあ、ネガティブにばかり考えていてもしょうがありませんので、前向きに次の検査に臨みたいと思っています。早めに検査をすれば、それだけ病気への対処も早くできることになるのですから。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。