明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常189 大阪の統合型リゾート(IR)計画について

こんにちは。

 

昨日は、4週間に1度の血液内科診療に行ってきました。体調に大きな変化はないのですが、今治療を行っているダラキューロ、使用し始めてから間もなく2年になり、そろそろ効果が弱くなってきているようです。私の場合、重要な腫瘍マーカーのひとつにigAがあることは前にも少し説明しましたが、その値が少しずつ高くなってきており、このまま推移するならば、1ヶ月か2ヶ月後には、新たな薬に切り替える必要が出てくるそうです。また、その際には、最初は様子を見るために、1週間ほどの入院が必要なようです。あらゆる薬品は、ある程度長期間使用を続けると、体がそれに対する耐性を作っていきますので、次第にその効果が薄れてしまうのは止むを得ないことです。ただ、多発性骨髄腫の場合、最近開発された新薬も含めてまだ試してみるべき薬は色々あるそうなので、さほど心配はしていません。ただ、こんな調子で何年かおきに薬を変更していくのかと思うと、少しうんざりしてしまいますね。これも根本治療法がまだ見つかっていない病気の宿命とはわかっているのですが。

 

少し肌寒い日が続きましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。天気予報によると、来週は暖かい日差しが戻ってくるようで、ゴールデン・ウィークは過ごしやすくなりそうですね。とはいっても、今のところほとんど何の予定もない私です。どこか、人混みや賑わっている街を避けて、ゆっくりできるところには訪れたいとは思っていますが。

 

さて、「賑わっている街」といえば、先日政府は大阪府大阪市に対してカジノを含む統合型リゾート(IR)の開発を認定しました。他の地域にも意欲をみせていたところがありましたが、最終的には、最も人口が多く、集客力を見込める大阪が選ばれたようです。ちなみに、初期投資は1兆800億円、来場者は年間2000万人(うち、7割は国内から)を見込んでおり、年間売上額は約5200億円となっています。開業は2029年の予定ですが、2025年に開催される予定の万博と合わせて、これが実現し、成功すれば、大阪港地域は一気に活性化が進むものと期待されているのです。この国の「観光立国」としての立て直し、そして大阪および関西の経済的地位向上への期待は、非常に強いようです。実際、関西に住んでいると、これらについてのニュースは比較的頻繁に流れるのですが、他地域ではどうなのでしょうか。なお、大阪信用金庫による最新の調査によると、万博が行われることを「知っている」のは97.7%に上っていますが、「必ず来場する」は20.6%にとどまり、「来場する予定」を合わせても6割弱となっています。この数字を高いと見るか、低いと見るかは意見の分かれるところかもしれません。余談ですが、万博の入場料金は大人一人8000円にする方向で調整が進められているそうです。つまり、夫婦と子供2人の4人家族で出かけると、入場するだけで2万円以上かかってしまう計算になります。民間のテーマパークならいざ知らず、国が大々的に支援するイベントなのですから、もう少し安くならないのか、と思うのは私だけでしょうか。「空飛ぶ車」には興味を覚えますけどね。

しかしまあ、今回は万博の話はさて置くとして、IRの話です。

IRについては、これまでもメリット、デメリットの両方からさまざまな意見が出されてきました。大雑把に言ってしまえば、メリットとしては経済効果と関西地区の地位向上、デメリットとしてはギャンブル依存症への懸念と膨らみ続ける費用の問題その他ということになります。そしてこれらについてはネット上にも、そして新聞その他のメディアにもさまざまな情報が流れていますので、ここでは極力割愛します。

私がもっとも懸念するのは、推進側が「IRはカジノだけではない。あくまで統合型リゾートなのだ。」と主張する点に関してです。この場合、そのモデルとなるのはアメリカのラスベガスでしょう。

ラスベガスは砂漠の中のほとんど何もないようなところに作られた巨大都市で、ギャンブルはもちろんですが、その中でほとんどすべての生活が完結してしまうほど、充実した設備を誇っています。とくにエンターテインメントには強く、例えば、シルク・ド・ソレイユの「本場」といえば今やラスベガスのことを指します。また、グラミー賞を取ったこともあり、映画「タイタニック」の主題歌で日本でも一躍有名になったセリーヌ・ディオンが2003年から16年にもわたってラスベガスでレジデンシー公演(そこにずっととどまって公演を続けること。もちろん、合間に他地域でツアーを行うことは可能です。)を行ったことは有名です。このような公演を行ったのはセリーヌが初めてではなく、過去にはフランク・シナトラエルヴィス・プレスリーも、これほど長期間ではないものの、ラスベガスに長くとどまってコンサートを開き続けたことがあるそうです。その結果、ラスベガスでは現在、収益全体でカジノが占める部分は約40%にとどまっています。カジノを中心にしながらも、それに依存しすぎないビジネス・モデルが成り立っているわけですね。

その他、世界で大規模なカジノが展開されているところとしては、マカオシンガポールが有名ですが、こちらはカジノ依存率が高くて約70%です。そして、この数字をもう少し下げられないか、という議論が盛んに行われているようです。

これに対して、大阪の場合は約80%の利益をカジノからあげることが想定されています。これは、乱暴に言ってしまえば、「カジノが失敗したらそれで終わり」というものです。現在のところ、ホテルや国際会議場等を建設するという計画があるそうですが、それだけで世界中から多くの観光客を呼び込むことは難しいでしょう。また、エンターテインメントとなると、すぐそばに大阪市の中心部があり、毎日のようにさまざまなイベントやコンサートが行われているのですから、そちらに人が流れてしまう可能性は高いと思います。もちろん、大きなホール等を誘致して、そこで世界規模のアーティスト公演を行っていくなどの工夫はされるでしょう。しかしそれでも、ラスベガスのように「シルク・ド・ソレイユを見るついでにカジノにも立ち寄る」というような客層を取り込めるかどうかは、不透明なところが多いのです。

会場となる夢州(ゆめしま)というところは、市街地中心部からは微妙に離れた距離にあるため、道路や公共交通機関の整備が不可欠であり、こちらの方は予定よりかなり遅れている模様で、しかも建設費がかなり膨大なものになるものと見込まれています。スムーズな移動ができないと、自然と客足は遠のきがちになってしまい、ホテルもカジノも採算が悪化するというリスクは大きなものだと思います。

どうせなら、現在も再開発中の梅田北エリアあたりにドーンと大きな施設を建てればこうした懸念はなかったのかもしれませんが、カジノ=ギャンブル=治安の悪化というイメージを完全になくすことは難しいため、市街地からはちょっと外れた大阪港の埋め立て地である夢州に誘致して、そうした不安感を少しでも払拭しようとした、ということになるのではないか、と邪推しているのですが、本当のところはどうなのでしょうか。

カジノそのものの是非はさて置くとしても、観光産業をその地域の中心産業に据えることの危険性は、この3年間のコロナ禍が証明してくれています。もしまた再び何らかの病原菌やウイルスによるパンデミックが起きたり、その他の社会不安が勃発したりして、それが数年間も続いたとしたら、民間業者であるカジノ運営業者は、果たして客数の激減に耐えて、営業を続けてくれるのでしょうか。どうしてもギャンブルをやりたいというなら、わざわざ現地まで出かけなくても、オンライン・カジノもあります。

もちろん、そんなことにはならないのが理想ですが、一方で、最悪の事態をも想定し、対策を練っておくことが行政に求められるでしょう。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。