明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常217 クマとの共存を考える

 

こんにちは。

 

今年は、クマの出没、そして人間に危害が加えられた例は急増しているようですね。環境省による速報値を見ると、今年4月から10月まででクマに襲われることによってけがや死亡などの被害を受けた人の数は全国で180件に上っています。この数字は、これまで最多だった2020年(年間で158人)を既に上回っていて、これからの冬眠前の時期にどれだけ増えてしまうのか、非常に大きな警戒が必要となっています。実際10月に入ってからの件数がとくに増えていることは決して軽んじてよいものではありません。


クマという動物、大変不思議なもので、誰もが恐ろしいとわかっているはずにも

かかわらず、ディズニーのキャラクターである「くまのプーさん」や、童謡「森のくまさん」等の可愛らしいイメージが先行しているせいか、その被害のことを差し迫った危険として考えている人はさほど多くないようです。「都会に住んでいれば、クマに遭遇することなんてあるはずがない・・・」という先入観がそうさせていることもあるでしょう。

しかし、最近のニュースを見ていると、必ずしもクマは森や草原にだけ生活しているわけではないことが明らかになってきています。もちろん、ねぐらは森の中の目立たない所にあるのでしょうが、エサを求めて、次第に里山、あるいは住宅街へ降りてくることも珍しくなくなってきているのです。クマが好んで食べるのはドングリなどの木の実ですが、冬が近づくと、そういったものは減ってきてしまいますので、さらに山から下りてきて、えさにありつけそうな住宅街や商店、そして畑等に出没するようになっているのです。

クマは大変頭の良い動物ですので、一度「あそこに行けば食事にありつける」ということがわかれば、何度でもそこを訪れます。また、イヌよりも数千倍嗅覚が優れていると言われていますから、匂いを頼りに、やって来ることもあるのでしょう。

ただ、ツキノワグマに関して言えば、そもそも比較的臆病な動物なので、人間側が下手に騒いだり、攻撃しようとしたりしない限り、向こうから襲ってくることは滅多にないはずです。ただ、屋内に入ってしまったものの出口がわからず、パニックになってしまった時などは危ないようで、そんな時は、とにかくクマから離れてそれ以上刺激しないように見守り、可能ならば、出口を大きく開けて、クマがそれに気づくように仕向けることが、私達にできる最大の防御策であるようです。

ただ、数年前から「人肉を食べるツキノワグマ」が話題になっていることもたしかです。例えば、2016年、秋田県鹿角市では、タケノコを採りに来ていた男女4人が次々にクマに襲われるという事件があったのですが、ここで地元の人が恐怖におののいたのは、たくさんの人がいれば、クマは逃げていくと信じられていたことが見事に裏切られたこと、そして、遺体の一部は食べられた跡があったということです。クマは臆病だ、そしてヒトを食べることなどありえない、という古くからの言い伝えはもはや迷信でしかないのか? 人肉を食べることをクマが覚えてしまったなら、今後どうなるのか?・・・ 恐怖は膨らむばかりです。

ただこの事件に関しては、私が少し調べた限りでは、幸いなことに続報はあまりないようです。つまりクマ社会の中で「人肉を食べる」という行為はさほど一般化していないようです。

 

そうは言っても、クマの活動域が人間のそれときわめて近くなっていることは事実ですから、今後どのような被害が出るかわかりません。これに対しては、専門家も大きな危機感を持っているようです。

例えば、世界的な環境保護団体であるWWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の日本支部であるWWFジャパンは「クマとの共存を目指して」というリーフレットを発表しています。それによるとそもそもの原因は、山が荒れて、山中にクマの食物が少なくなってしまったことに加え、中山間地期における高齢化、過疎化、耕作放棄などの問題が重なり、こうした自然的・社会的要因が複雑に絡み合った結果にあるため、即効性のある対策はないとされています。では何ができるのか? それは結局のところ、生ごみや廃棄果樹等の放置を極力減らし、さらには電気柵を設けるなどして、クマが人間の住む領域に入ってくることを避けるようにする、つまり「棲み分け」による共存の道です。

要するに、お互いのテリトリーを荒らさず、遭遇を避けるようにすれば、被害は相当減らせるはずだ、ということですね。

クマ1頭と人間1人の間には圧倒的な体力差がありますから、これを愛玩動物または役務をさせる動物として飼いならすことはほぼ不可能です。だとしたら、こうした道が「共存」を進める唯一の選択肢なのかもしれません。これを「共存」と呼んでよいのかどうか、少し判断に迷うところもありますが、とにかくおたがいを傷つけ合わないようにすることこそ、唯一の解決への道筋と理解すべきなのでしょう。

 

ただ、ここまで書いたことは、あくまで本州およびそれ以南に生息するツキノワグマに関してです。しかし、北海道に住むヒグマとなると、かなり様相が異なってきます。そこで次回は、ヒグマと人間の関係について、少し書いていきたいと思います。

 

今回も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。