明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常26 入院中のエピソード (その1)

こんにちは。

 

前々回の投稿でICDについて少しご紹介しましたが、その大きさについて質問をいただきましたので、訂正と補足をさせていただきます。

ICDの大きさについて、「スマホと同じぐらい」と表現しましたが、改めて調べてみると、メーカーにもよるのですが、実際には、一般的なスマホのサイズよりも二回りほど小さいサイズのようです。(それでも、ペースメーカーよりは大きいです。)重さは、80グラム前後ということで、間違いはありませんでした。なにせ、手術台の上で「これから埋め込むのはこれです」と手渡された時の記憶があいまいだったことに加えて、私のスマホが小型のものなので、ちょっと勘違いして、誤った表現をしてしまいました。失礼しました。

ついでにICDについてもう少しだけ補足しておきます。これは内蔵された電池で動いているもので、電池だけの交換はできません。なので、電池の寿命(通常7~8年。ただし、電気ショックを与えるような作動が頻繁に起きると、寿命は短くなります)が来ると、再び手術で新しい機械を埋め込まなくてはなりません。これはちょっと厄介ですね。

ただ他方で、通常は、心臓の働きを機械内部に記録するとともに、付属の機械を通じて、指定された医療機関(つまり現在通院している病院)に、携帯電話回線を使って、データを送信することもできます。これによって、病院側の体制冴え整っていれば、いつでも患者の様子を知ることができるのです。本当に便利なものです。

 

さて、この入院は2か月ほどでしたが、その間にもずいぶん色々なことを経験しました。

もっとも悩まされた、というかこれまでにない経験だったのが、幻覚と幻聴です。まだ脳の働きが十分でないときにはしばしば起きるようで、時間の経過とともに解消されていくのですが、少し戸惑ったのは、見えている幻覚がけっこうリアルだったことです。幻覚というと、あり得ないもの、例えば妖怪変化の類をイメージする方も多いでしょうが、私の場合、それはほとんどありませんでした。(一度、ふと気がつくと、病室にはなかったはずの人形が置かれていて、それが夜中に目から光線を出しはじめたことがありましたが) 私の見た幻覚のほとんどはもう少し現実味のあるもので、例えば病室に見舞いの花輪が現れたり、テレビに病院の外の様子(と思われる風景)が映ったり・・・などという幻覚は何度も見ました。現実との区別がつきにくいため、半ば幻覚だとわかっていても、そう断定できず、当初は随分戸惑ったものです。看護師さんにはあらぬことを口走ってしまったかもしれません。今思うと、恥ずかしい限りですが、まあ、よくあることのようだ、ということで自分を納得させています。(苦笑)

もうひとつ苦労したのが、肋骨の骨折です。どうやらAEDで最初の緊急処置をしてもらった時、心臓は息を吹き返したけれども、強い力を胸の上から加えられたことによって、3か所ほど骨折したらしいのです。もちろん、骨折といっても肋骨のことですから、ポキンと折れてしまったわけではなく、少し深くヒビが入ったという程度のものです。これはまあ、しょうがないことです。誰だって「命と骨、どちらが大事か?」と聞かれたら、命、と答えるに決まっていますよね。 それだけ、AEDによる処置には強い力が加わるということです、職場の研修や自動車教習所でAEDの扱い方を習ったことのある方はたくさんいらっしゃるかもしれませんが、実際に効果的にこの機械を使うためには、ある程度の「慣れ」といざというときの「思い切り」が必要なようです。

ただ、ひびが入った程度、とはいっても、当初は姿勢を変えるたびに痛みが走り、とくに寝たり起きたりする時が一苦労でした。少しでも痛くない角度はないものか、と色々試したのですが、始末の悪いことに、どこに痛みが走るのか、日によって変化するのです。ベッドから落ちそうな変な格好で寝ていて、看護師さんに驚かれたこともありました。ちなみに、この骨折、治療法というべきものがありません。よほど痛みが激しければ、コルセットで固定するなどの方法を取るのでしょうが、私の場合は、そこまでの必要はない、ということで、自然治癒にゆだねられ、結局完全に痛みが引くまでには1か月半ほどかかりました。

多発性骨髄腫の影響で、骨が弱くなっていたことも、この骨折の原因ですね。この病気に罹患した人は、階段で転倒したりしないように気をつける必要があります。くれぐれもお気をつけください。

 

今日はここまで。本当はまだまだご紹介したいエピソードがあるのですが、それは別の機会に譲ることにしましょう。次回は、この病院の施設やスタッフについて印象に残っていることを書いていく予定です。