明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常96 ドラマ「風のガーデン」をめぐって

こんにちは。

 

4月になり、さまざまな「切り替わり」が行われています。とくに成年年齢の18歳への切り下げは、今後色々と影響が出てきそうな気がします。長期的に注目しなくてはならないことでしょうが。とりあえずはしばらく様子見ということになるのでしょうか。

というわけで、当ブログはこれまでと変わることなく、淡々と進めていく予定ですのでよろしく。

早速ですが、前回の補足から。

白い巨塔」のテレビ・ドラマ化は1978年と書きましたが、それより以前に、まず1965年にラジオ・ドラマ化、そして翌1966年には映画化されています。主演はいずれも田宮二郎さんです。つまり、テレビ・ドラマ化以前から、かなり話題になっていた問題作として位置づけられていたのですね。だからこそ「白いシリーズ」では最終作品として、それこそ満を持する形で放映に至ったのです。

しかし1973年販「白い影」もこれに負けず劣らずの迫力を持った作品だったのです。原作が渡辺淳一さんですから、恋愛ものの色合いがどうしてもある程度は濃くなっていますが、何と言っても、脚本に倉本聰さんがかかわっているのです。(全話がそうだというわけではありませんが、序盤の1~5話、そして後半の12~14話、つまりもっとも重要な回が彼の脚本になっています。)そのためでしょうか。大変重いテーマを扱っているにもかかわらず、どこか柔らかい、そして静かな手触りのドラマとなっています。それはその他の回にも共通しています。さらに、そのテイストは、2001年版にも少なからず影響を及ぼしているようです。また、重要な部分でBGMとしてそっと流れるマーラー交響曲第5番第4楽章の旋律が、大変印象的です。

ところで、倉本聰脚本のドラマと言えば、誰でもすぐに思い浮かべるのが「北の国から」でしょう。でも、今回ご紹介したいのは2008年に放映された「風のガーデン」です。このドラマは、緒形拳さんの遺作になったということでも話題になりましたが、「白い影」と同様、主人公である医師ががん(このドラマではすい臓がん)に罹患し、肉体と精神をだんだんと蝕まれていく、というドラマです。ここでの主人公(中井貴一さん)は大病院の中では私達患者から見て比較的地味とも思える麻酔科医の医師ですが、普段はとても明るく、学生向けの講義は常に笑い声が絶えない、という華やかな存在です。しかし、彼の身体に暗い影が差していることは初回で既に明らかになっています。このドラマは、単なる医療ドラマでも、あるいはがんという病気をテーマにしたドラマでもありません。話は、不倫、家族崩壊、知的障害、在宅医療など、とても暗く重いテーマを背景に進んでいきます。また、北海道の自然とガーデニング花言葉(といっても緒形拳さん演じる老医師が自分勝手に作って悦に入っている代物ですが)、よさこいソーラン生前葬などといった話題も挿入され、全11回がそれこそあっという間に過ぎていきます。そして何よりも光るのが、主演の中井貴一さん、そして知的障害の青年という難しい役を見事にこなしている神木隆之介さんの演技力です。とくに、身体が衰えてからの主人公の姿は、本当にリアリティ溢れるものだと思います。

それから、もうひとつこのドラマで見逃さないのが主題曲、挿入曲を歌った平原綾香さん。曲は、ショパンノクターン第20番を元にしたものですが、これに英語および日本語の歌詞をつけ、見事に彼女自身のオリジナルな作品に仕上げています。また、このドラマで、彼女は主人公の現在の恋人役を演じているのですが、これもなかなかのものです。おそらく中井貴一さんの的確なアドバイスがあったのでしょうね。

それにしても、医療現場や医師を取り上げたドラマや映画は、本当に数が多いです。病気そのものについての勉強や病院の内部事情についての取材などが重要となる難しいテーマなのに、これを取り上げようとする監督や演出家が多いのはなぜでしょうか。それはおそらく、「ヒトの命に直接かかわる」ことを取り上げるからこそ、視聴者に響きやすい、ということなのでしょう。そして患者が医師自身である場合、その人間性がむき出しになっていく分、余計に私達はそこに様々に入り乱れた感情を抱くことになります。病気に罹患するという経験は、性別にも、年齢にも、そしてもちろん職業等にも関係なく、誰にでも訪れる可能性があるものです。そしてその時、人はどのように振舞ってしまうのか、また、どのように振舞っていくべきなのか・・・本当のところは、実際に病気にかかってみないとリアリティをもって考えることはできないでしょうが、ご紹介したドラマ等をそのひとつの機会にすることはできるのかな、と思う次第です。

 

最後にちょっと変わった写真を一枚。

今朝気がついたのですが、我が家(マンションの6階)のベランダの片隅で、なんと雑草が花を咲かせていました。ここは、ちょうどベランダの角にあたるため、土が溜まりやすいのですが、それにしても、種子が飛んできて、芽吹き、花を咲かせるまでに成長するとは、驚きを通り越して、感心してしまいます。残念ながら花の名前はわからないのですが、その強い生命力には脱帽です。

f:id:kanazawabaku:20220401171940p:plain


今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。