明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常44 民間療法は悪か?

こんにちは。

 

実は今、父親が軽い肺炎で入院しているのですが、緊急連絡用に持たせている簡単スマホの使いかたがよくわからず、毎日母親と大騒ぎを繰り広げています。自分で気がつかないうちに電話を発信していたり、LINEのグループ通話が始まっていたり(これには、私も巻き込まれてしまっています。そもそもいつ誰がグループを設定したのか、よくわかりません 笑)、挙句の果てには、わけが分からないまま着信拒否の設定をしてしまい、「電話が通じない」と騒ぎだしたり・・・。スマホに限った事ではないですが、機械はある程度日常的に触れていないと駄目ですね。私自身、こうした通信機器に精通したり、使いこなしたりできているわけではありませんが、年老いた時、周回遅れにならない程度にはこれからのIT危機の進化に何とかついていきたいものです。

なお、父親の病状は今のところまずまず安定しており、2週間程度で退院できる見込みですので、どうかご心配なく。

 

さて、前回はがん治療における標準治療について少し詳しくご紹介しました。ほぼ信頼できる標準治療がある程度確立されているというのは、患者側にとって、そしておそらく医療関係者側にとっても、ありがたいことだろうと思います。私自身、ほぼ標準治療に沿う形でこれまで治療を受け、まずまずの成果が見られているおかげで、今日もこうして生きているわけですから、まったく不満はありません。

しかし、病状は人それぞれです。どうしても効果が見られず、焦っている方、医師に不満や不信感を抱いている方も少なからずいらっしゃるのが現実です。まあ、どんな治療でも100%確実というものは存在しないわけで、科学的客観的に見れば、そのような患者さんが出てきてしまうことを完全に防ぐのは、おそらく困難なのでしょう。ただ、当の患者さんやそのご家族にとっては、生死にかかわる深刻な問題であり、他に頼る術を探そうとするのは当然のことでしょう。そこでクローズアップされるのが、いわゆる民間療法です。

がん治療に関する民間療法は、それこそ星の数ほどあり、そのうちどれを信用すればよいのか、という点も患者側を悩ませる新たなタネになってしまっています。ただ、それらの代表的なものは、食事に関するものと薬品に関するものとに大別できるようです。要するに、「○○を食べ続けるとがんが消える」とか「××を摂取するのは良くない」とかいうものですね。実際、それらを実践して「がんが治った」という手記を発表しておられる方もいらっしゃるようですし、それを推奨する医師の書いた本も結構売れているようです。

ただ、民間療法には気をつけなければならない点があります。もちろん、根本的な問題として「効くか効かないかわからない」「薬の場合、けっこう高額になる事がある」ということもありますが、それと同時に重要なのは、それがかえって健康を害する引き金となってしまう可能性があることです。例えば特定の薬の長期継続的な服用は、肝機能障害を引き起こす恐れがあります。また、動物性たんぱく質を一切取らない等といった極端な食事が、かえって不健康なものとなることは言うまでもありません。

これは私の個人的見解なのですが、数ある民間療法について、その有効性を西洋医学あるいはその基盤となっている自然科学の立場から「効果がない」と断定し、これを排除してしまうのは、問題の解決になりません。民間療法に頼る方々の多くは、そんなことは承知の上で、なお、一縷(いちる)の望みをそこに託そうとしているわけですから。

ただ、その療法がかえって健康を害するようなことがあってはならないはずです。それには、民間療法を試す際は、その内容を従来の主治医にもきちんと伝えることが大事です。そして、医師側の判断としては、たとえがんを直すことについての有効性を証明することはなかなかできなくても、それが標準治療等の大きな妨げにならないのならば、とりあえずはそれを続けることを認めてもよいと思うのです。前々回の投稿でも書きましたが、現時点で科学性が証明されていなくても、将来認められる可能性だってありうるのですから、はじめからそれを拒否するという姿勢はあまり良くないのではないでしょうか。

残念ながら、今のところ西洋医学に基づいて治療を行っている医師の中には民間療法を完全に馬鹿にしている方も少なくないようです。逆に、民間療法を実践している方にも、西洋医学に対して少なからず敵意や偏見を抱いている方がおられるようです。しかし、大事なのは西洋医学なのかそうでないかということではなく、あくまで何が患者のためになるのか、という点です。たとえそれが一時の精神的な安らぎに過ぎなかったとしても、その療法を実施することにまったく意味はなかったとは言えないのではないでしょうか。

そういうことも含めて、患者にかかわる方々がもっと交流を深め、情報交換、意見交換をできるようになれば、医学界はもう一段階上のステージに上がれるような気がします。

ただし、民間療法を喧伝するなかには、かなり悪質な業者もいるようです。手っ取り早く言えば、弱っている患者の精神状態につけこんでくる悪徳ビジネスですね。こうした業者の多くは、「必ず効く」とか「これで治った患者は既に千人を超えました!」等といった断言的かつ患者の気持ちに強く訴えかけるようなうたい文句を前面に押し出しています。患者側としては、こうした言葉を鵜吞みにしないこと、そして、なるべく自分の精神状態を安定的に保ち続けられるような治療方法を、主治医と相談しながら考えていくことだと思います。

ちなみに私は、たとえ標準治療では手が負えないような状態に陥ったとしても、それは自分の運命だと思って受け入れるつもりです。今のところ、民間療法の門をたたくことはまったく考えていません。

 

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。