明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常56 あをによし

こんにちは。

 

かなり冷え込んできましたね。皆さん、体調にお変わりはないでしょうか。私は、薬のせいで免疫力が低下しているため、もっとも気を付けなくてはならない季節となっています。

しかし、ずっと家に閉じこもっていてもしょうがないので、先日、久しぶりに奈良に出かけてきました。目的は奈良国立博物館で行われている正倉院展、そして法隆寺です。

ご存じの方も多いと思いますが、正倉院展は毎年この時期に開催されている、いわば奈良の年中行事のようなものです。正倉院というところにはいったいどれだけの宝物が収蔵されているのかわかりませんが、よくもまあネタが尽きないものです。

今年の場合、展示の目玉は聖武天皇が愛用していた(と思われる)琵琶と尺八、そして蓮の葉が重なっている様子を模したお香の台などでした。これらの細工が非常に細かいこと、そして美しいことは言うまでもありませんが、他に、「宝物」と言えるような、言えないような、珍しいものも展示されていました。それは、当時宮中に勤め、写経の仕事をしていた人達が日常的に使用していた極太の筆や硯、それに、「今日は体調が悪く、下痢がひどいので仕事は休みます。どうか責めないでください。」などと書き記したメモなどです。文房具の多くは消耗品でしょうし、メモに至っては、どういう経緯で正倉院に収蔵されることになったのかわかりませんが、天平の時代に生きた人々の生々しい姿を垣間見ることができたのは、非常に面白かったです。

私はずいぶん久しぶりにこの展覧会に来たのですが、詳しい説明や要所要所での拡大写真展示など、非常に工夫されているなあ、と感じました。入場は完全予約制ですし、高齢者でも、ゆったりと、そして丁寧に鑑賞できるようになっていたのは、今の時代ならでは、というところでしょうか。ただ、当日券販売が一切行われないことについては、もっと広報を徹底した方がよいようです。知らずに予約をせずに来てしまった人がいないか、ちょっと心配になります。

この博物館、東大寺興福寺奈良公園と隣接している場所にあるのですが、いつもここでエサをねだっている鹿たち、なんだかあまり元気がないように見えました。やはり観光客が激減して、鹿せんべいをもらう機会が減っているのでしょうか。早く人出が戻るといいですね。

法隆寺は、奈良市内ではなく、少し離れた斑鳩町にあります。これもご存じの方が多いと思いますが、現在の斑鳩町は、きわめてのどかな田園地帯です。寺の近くには住宅街もあり、比較的交通量の多い国道も通っていますが、基本的には静かな町です。超有名な観光地ではあるのですが、コロナのせいか、それとも若干交通の便が悪いせいか、参道にもさほど人が溢れている様子はありません。

しかし、そんな静かな参道を通って境内に入っていくと、雰囲気は一変します。伽藍にならぶ金堂や五重塔等の建物、そして安置されている数多くの仏像には、思わず背筋が伸びるような威厳を感じます。この、のどかな周辺とピンと張りつめたような雰囲気の漂う境内、というギャップがとても面白いですね。例えば京都や奈良市内などの観光地は、古くからの社寺が街中に溶け込むような形で共存しているという面白さがあるのですが、法隆寺の場合は、推古天皇聖徳太子の時代の威光が、現代とはまったく切り離されたような感じできちんと保たれており、そのことから古代に色々と思いを馳せることができます。

それにしても、飛鳥時代から奈良時代にかけての仏像は、とてもきれいな曲線を描いたお姿をしておられて、威厳のある中にも、こちらの心を穏やかにしてくださいます。とくに百済観音像には、しばらく見とれてしまいました。平安時代以降の仏像とも、また、鎌倉時代の仏像とも大きく異なるそのお姿に、歴史の流れを感じるのも幸せな一時です。

 

古くからある名刹って、中学生あるいは高校生の頃にも色々と見学したように記憶しているのですが、その時と今では、まったく印象が異なりますね。それだけ、こちらの関心や知識が広がっている、ということかもしれません。

これからも、「行ったことがある」と敬遠せずに、どんどん出かけていきたいものです。残念ながら、こういったところは完全なバリアフリー化がなされているわけではないので、足がしっかり動く今のうちが良いのかもしれません。

 

今回は、病気のこととはまったく関係のない話に終始してしまいました。興味のない方には申し訳ありません。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。