明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常129 ジェンダー・ギャップ

 

こんにちは。

 

夏真っ盛りという感じで、今週は連日猛暑が続くようですが、皆さん、体調を崩したりしてはいませんか? こう暑いと、寝るときにもエアコンが欲しくなってしまいますが、私は夜中じゅうエアコンをつけっ放しにするとことはしないようにしています。たしかに、快適に眠りにつくことはできるのですが、寝ている間全然汗をかかないまま朝を迎えると、どうも次の日は体がだるく感じてしまうからです。寝る前にタイマーを2時間程度かけ、夜中とか明け方に暑くて起きてしまったら、とりあえず窓を開けます。そして起床後しばらくもなるべく自然の風に身を委ね、どうしても必要なら扇風機を回します。そして、いよいよエアコンのリモコンに手を伸ばすのは本格的に暑くなってきてから、というようにしています。もちろん、体調は人によって異なりますし、夜中でも熱中症の危険性はありますから、我慢するのは禁物ですが、いずれにせよ、この季節の体調管理は難しいですね。

 

ところで、2週間ほど前になりますが、世界経済フォーラム(WEF)が、各国の男女格差の現状を評価した「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)の2022年版を発表しました。それによると、日本のジェンダー・ギャップ指数は146カ国中116位(前年は156カ国中120位)で、主要7カ国(G7)で最下位だったそうです。全体順位は昨年より若干上昇していますが、これは調査対象となった国が減少してしまったこと(主にコロナの影響)が関係しているのであって、日本のスコアは0.650、世界全体の平均である0.681を大きく下回っているという現状は変わっていません。

ちなみに世界全体のランキングは以下のようになっています。

この指数は4つの分野で測定しているのですが、日本のそれぞれの指数を全体1位のアイスランドを比較したのが下のチャートです。これを見ると、日本は教育および健康の分野ではまずまずの実績を挙げているものの、経済や政治の分野での男女平等の達成度がかなり低いと見なされているようです。今回の参議院選挙では女性の議員が若干増えたようですが、まだまだですよね。


 日本で男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年ですから、社会全体にもっと男女平等の土壌を育てていかなければならないという風潮が広がったのは随分前になるわけですが、いまだにこのような状況にとどまっているのは何故なのでしょうか。

その要因については、すでに多くの分析がなされていますし、私の所属する学会でもさまざまな角度からの議論が進んでいますが、このブログは論文ではありませんのでそれらを紹介したり、評価したりすることはしません。ただ、こういったニュースに接するたびに思い出す個人的な経験がありますので、それを書きたいと思います。

 それは今から20年ほど前だったと思います。ある日本を代表する、誰でも名前を知っている企業が、はじめて女性総合職を採用することになりました。そしてその第1号として、私の指導するゼミに所属していた女子学生が見事採用されたのです。もちろん本人は大喜びで、その企業への就職を決めました。おそらく色々とやりたい仕事もあったでしょう。そして希望に満ちていたと思います。

 ところが、入社してから1年ほど経ったある日、突然彼女から連絡がありました。「今度結婚することになったが、それにともなって会社を辞めなければならなくなりそうだ。」と言うのです。少し冗談を言ったりしながら気持ちを落ち着かせて、詳しく事情を聞くと、次のようなことがわかりました。その会社はもともと典型的なファミリー企業(同族企業)で、非常に保守的な体質だったのですが、当時の人事担当者が「21世紀を生き抜いていくには、女性の能力と知見、感覚が絶対に必要になる」と粘り強くトップを説得し、ようやくのことで女性総合職誕生となったのですが、入り口はそうやって整備されても、実際の職場の雰囲気は旧態依然としたままだったようなのです。「新しい女の子が入ってきた」ということで大事にはされたのですが、それ以上の期待はされず、ずっと違和感を持ったまま仕事を続けていたのです。そして決定的になったのが、結婚話なのです。お相手の方は、彼女が入社してから知り合った職場の先輩だそうですが、この会社では、社内結婚の場合、男性は次の人事異動で地方または海外への転勤を命じられるのが慣例となっており、他方で女性の方は異動は認められないこと、そして夫の赴任先に一緒に行くことが前提となっている、ということでした。つまり、彼女にとっての選択肢は、退職して専業主婦になること、あるいは結婚そのものをあきらめること、という二つの道しかなかったのです。

 もちろん、会社のこうした古臭い体質と戦う、ということもあり得ないことではありません。実際、私は彼女が入社するときにお世話になった人事担当者に少し電話で話を伺ったりしました。しかし、こうしたことは簡単に解決できるわけではありませんし、結婚を目前に控えた彼女にとって、「風潮を変える」というのはあまりにも非現実的です。そして結局、入社してからわずか1年半ほどでの退職を選んだのです。

 このことは、彼女にとってだけではなく、会社にとっても大きな損失になったでしょう。せっかくの女性総合職なのに、しっかりと一人前の仕事ができるようになる前に退職してしまったのですから、獲得した人材を活かせなかったという意味で、随分もったいないことをしてしまったものです。そしてそれは、結局のところ、女性社員を活かすための環境整備や職場・社員の意識が育っていなかったために、起きてしまったことなのです。

この話はずいぶん前のことですので、今ではある程度は改善されているかもしれません。しかし、日本の多くの会社や官公庁で、似たような事情のために、男女平等が進んでいないところは多いのではないでしょうか。例えば、育児休業を取得するのが、いまだに女性側が圧倒的で、男性社員はきわめて少数にとどまっていることなどは、その表れでしょう。制度をいくつか導入しただけでは、男女平等は進まないのです。

こうした傾向を根本的に改善するためには、社会の仕組みそのものを見直す必要があります。そして、本当の意味での平等な社会の在り方というのはどのようなものなのか、幅広い視点から考えていく必要があります。つまり、法律や条例で数値目標を作ったり、既存の管理体制に接ぎ木のように様々な制度をつけ足して、それで「ダイバーシティ・マネジメント」と標榜したりしているようでは、なかなか解決への道は開かれないでしょう。

ただ、ここまでの話に抜け落ちている点がもう一つ指摘しておかなければなりません。それはLGDBの議論に象徴される「性の多様性」という問題です。またこれに連動して「家庭というものの形の多様化」という問題も浮かび上がってきます。つまり、「男と女」という性別二元論を前提にして話を進めてしまうと、思わぬところで行き詰ってしまう可能性があるのです。

もちろん、今の段階では「そこまで考える余裕はない。まずは従来型の枠組みでの男女平等を」という考えもわからないではありません。しかし、その先にも解決すべき問題が控えていることは、強く意識しておかなければならないのです。そうでないと、結局のところ現実後追い型、対処療法型の解決策の積み上げに終始してしまうかもしれない、ということを頭に入れたうえで、この社会の未来図を描いていく必要があるのです。

この問題、まだまだ考えるべきことはたくさんありますね。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。