明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常140 国税庁を名乗る詐欺メール

こんにちは。

 

今週は、残暑と言うのがはばかられるほどの酷暑が続いていまね。いったん涼しくなりかけてからの猛暑に、身体がついていかなくなりそうです。ただ、秋の虫の声も確実に増えており、「もう少しの我慢だよ」と励まされているような気分になります。昔から「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉もあります。熱中症等に気をつけながら、何とか乗り切っていきましょう。そういえば、こういう急激な気温変化は、ストレスの大きな原因にもなり、それが精神的な疾患を招いてしまうこともあるそうですから、なおさら、気をつけたいものですね。

 

ところで、先月頃から国税庁を名乗る詐欺メールが全国で多数出回っていることをご存じでしょうか。内容は、下に示しましたが、簡単に言えば「税金が滞納状態になっているから早く払ってください」という主旨のものだそうです。これは明らかな詐欺メールで、国税庁のサイトでも注意喚起をしています。

国税庁のサイトより)

 

今回のことに限らず、架空請求等のメールが届いたという話は随分以前からありましたが、「税金を払え」というのは新手かもしれませんね。こういう比較的単純な詐欺メールにひっかかる人がどれだけいらっしゃるのかなあ、というのが正直な感想ですが、高齢者の中には公的な機関からの請求ということで、慌ててしまう方もいらっしゃるようです。詐欺グループの方は、100人に1人でもひっかかれば大儲け、ということで、適当な数字の組み合わせを電話番号として、大量に送り付けているのでしょう。自動でメールを送信する機械、一度に数百通?という単位でショートメールを送れるようなので、詐欺グループ側にしてみれば、電話による詐欺よりも手軽、ということになるのでしょうね。また、電話でのやり取りのような一種の「演技力」が不要であることも、彼等にとっては好都合でしょう。

 

この国税庁を語るものに関して言えば、明らかにおかしな点がいくつもあります。

第一に、国税庁や税務署が、納税にかかわるような重要な内容をメールで送ってくることは、まずありません。また、主たる家計維持者、つまり実際に納税者となっている名義の方以外の家族にも送られているようです。例えば夫が納税者となっているのに、妻の方にショートメールが届いたりしています。まったくあり得ない話ですよね。少し冷静になれば、こういったことはすぐに理解できるはずなのですが、人間は慌ててしまうと、正常な判断能力を失ってしまうものです。「自分は詐欺には絶対ひっかからない」という自信を持っている方ほど危ない、という指摘もあります。

不審なメールが送信されてきたとき、その真偽を判断する方法はいくつかあります。私はまず、先方のアドレスがフリー・アドレスでないのか、また、指示されているリンク先が、相手が名乗っている会社や官公庁のものと判断できるものかどうかを、まず確認します。アドレスをよく見れば、なんとなくわかるものです。

第二に、宛先が明記されていないメールは、それだけで疑うべきです。詐欺グループ側は、送信先の氏名までは把握していないことが多いですし、そもそも、一斉に大量送信しているので、いちいち宛名を記すなどという面倒なことはしないのです。そもそも、これが正式な文書だとしたら、ずいぶん失礼な話ですよね。

第三に、請求の根拠(何をいつ買ったのか、あるいは何の税金が未納なのか等)がメール本文に記載されていないものも、きわめて怪しいですね。たいてい詐欺メールです。「詳しくは・・・」とリンク先を記して、そこに誘導するのが目的ですから、詐欺グループ側からすれば、請求内容は本当はどうでもよいのです。というか、下手に詳しく請求内容を書いてしまうと、「そんな買い物に覚えはない」と無視されてしまう可能性が高いでしょう。ただ、ひょっとすると「覚えがない」と抗議や問い合わせをさせることを目的として、わざと架空の内容を書いていることもあるかもしれません。なお、うかつにリンク先をクリックすると、個人情報を抜き取るためのフィッシング・サイトに誘導されるのが常道です。

第四に、支払方法が銀行振り込みや郵便局での送金を指定しておらず、プリペイド・カードの購入等特殊なものになっているのも、ほとんどが怪しいと思って間違いないでしょう。現在、銀行や郵便局は、新たに口座を開設セする基準が厳しくなっています。もちろん、口座そのものを売買するという悪徳ビジネスも存在しますので、口座番号が記されているからと言って、信用できるものではありませんが。(振込先の名義が個人名になっているのも怪しいですね。)

なお、現金書留以外で現金を郵送することは、そもそも法律で禁じられていますので、そうした方法を指定している場合は、それだけでアウトです。

 

以前は、こういったメールは日本語がおかしい、という特徴がありました。おそらく外国人グループによる仕業が多かったのでしょう。しかし、現在は日本人が関わることが多くなったのか、それとも翻訳ソフトの精度が高くなったのか、文面の日本語だけでは、それが怪しいものであるかどうかを判断することは難しくなってしまっています。

 

上に書いたことは、多くン人が「そんなことはわかっている」と仰るような内容です。では、なぜ人は詐欺メールに騙されてしまうのでしょうか。それを考えると、彼らの手口が人間の心理を巧みに利用したものであることが見えてきます。

 

ひとつには、こういうメールを受け取った方の「恥ずかしい」とか「人に迷惑をかけられない」といった心理です。未納金があるということ自体、多くの人は何となく引け目を感じてしまいます。ましてや、それがどこかの会社等に迷惑を被らせていることになってはマズい、という意識が働いしてしまうのです。その結果、他人に相談することなく、自分一人で解決しようと思い、相手の仕掛けた罠に嵌ってしまうのです。

また、これと若干関連するのですが、多くの詐欺メールは支払期限を非常に短く設定していることも重要です。つまり決断するための時間的猶予を与えないことによって、判断を狂わせたり、知人に相談する時間を失わせたりしているわけですね。

ふたつめに、こういったトラブルはなるべく早く解決して、心配事をなくしてしまいたいという心理です。こういった詐欺メールで要求してくる金額はたいていの場合高くても2~3万円、安ければ数千円というものです。これは、それぐらいの額ならとにかくお金を払ってしまって、それでこれ以上のトラブルに巻き込まれるのを避けたい、という気持ちにつけこんでくるのです。また、それに近い値段の買い物だと、ここ数ヶ月の間にしたことがある人も多いでしょうから、たまたまその金額が請求金額と似通っていると、「あれかもしれない」と勝手に解釈して、お金を払ってしまう、という例も多いようです。いずれにしろ、比較的少ない金額の支払いで解決しようと思うわけですが、これは長い目で見ると、かえってトラブルを深刻化させてしまいます。相手は一度食らいついた獲物は決して放そうとしないからです。

 

こうした人間の心理から考えると、詐欺の被害に遭ってしまう人は、決して判断能力が劣っているとか、軽率な行動をするタイプだとかいうことはありません。偶然にもいくつかの条件が重なると、誰でもその沼にはまってしまう可能性はあるのです。

なお、今回書いた詐欺メールを見分ける方法は、いずれもひとつの目安に過ぎません。これらの条件をクリアしていても、それで「これは正規の請求だ」と判断することは危険なことは言うまでもありません。怪しいものは無視してしまうのがもっとも適切な対処法ですが、どうしても確かめたいときは、送信元の名前を語っている所に、直接電話やメールで確認することが重要です。(ただし、送られてきた詐欺メールに記載されているリンク先や電話番号ではなく、別途自分でその正規の連絡先を調べて、そこに連絡することです。例えば、国税庁ならば、そのサイトを見れば色々と問い合わせ先情報が記載されています。)送信元のアドレスやキーワードとなるような文言等をインターネットで検索してみるのもひとつの方法ですね。同じようなメールが届いて戸惑っている人のSNSが見つかるかもしれません。

 

今回の投稿を読んだ多くの方は「わかりきったことばかりだ」と感じられることだと思います。もちろん、それでよいのですが、途中で書きましたように、だまされないと思っている方ほど、落とし穴にはまりやすいということも自覚しておく必要がありますね。注意していきたいものです。また、

ネット社会の恐ろしさは、もちろんこれだけではありません。それについては、また機会を改めて書いていくつもりです。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。