明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常168 共通テストは大変だ

こんにちは。

 

前回の投稿で、坂本龍一さんの最新の演奏について触れましたが、その坂本さんと一緒にYMOイエロー・マジック・オーケストラ)で活躍していた高橋幸宏さんが亡くなりました。享年70歳。(坂本さんと同い年です) 2年ほど前に脳腫瘍と診断され、その後手術、治療、リハビリなどを繰り返していたものの、結局根本的には健康状態が回復しないままでした。直接の死因は明らかにされていませんが、最近は肺炎を患っていたそうです。

私が高橋さんを知ったのは、YMOよりもっと前、1970年代に加藤和彦さんが率いるサディスティック・ミカ・バンドという先鋭的でありながらとてもお洒落な雰囲気のあるバンドでドラムを演奏していた頃です。その後、どんどん活躍の場を広げていった高橋さんの熱心なリスナーではなかったものの、時々流れてくる、機械のように正確なリズムを刻むことができるのに、どこかに人間臭さを感じさせるドラミングと、決して表現力があるわけではないものの、独特の少し喉にひっかかるような歌声には、耳を奪われたものです。ご本人は復活をめざしておられたようなのですが、結局それがかなわなかったことは大変残念でなりません。

高橋幸宏さんのご冥福をお祈りします。

 

さて、気を取り直して今回の本題です。

昨日と今日、(1月14日、15日)は、大学入学共通テストが行われました。この後、各大学による二次試験等がありますから、受験生にとっては、まだまだひと安心という段階ではありませんが、それでも、ご家族も含めて、少しホッとしている方も多いでしょうね。

入試は、受験生にとって厳しい関門であることは言うまでもありませんが、これを実施する側にとっても、大変な緊張感を強いられるものです。毎年のこととはいえ、気の休まらない2日間と言うことになります。とくに、昨年の入試では、傷害事件やスマホを利用したカンニングが発生してしまったので、万が一に備える対策がさらに強化されて、関係者はおそらく準備が大変だっただろうと思います。また、受験生の体調不良に備えて、インフルエンザを発症した受験生、ノロ・ウイルスにやられた受験生に対しては以前から別室受験を行っていたのですが、近年はコロナ対策もありますので、それへの備えも欠かせません。それぞれの症状に応じて、別の部屋を用意しなければなりませんし、その部屋では、たとえ受験生が1人だけでも、試験監督は最低2名が配置されることになっていますので、場合によっては、予定よりも相当多数の部屋と人員を用意しなければならないのです。また、さまざまな突発的事態に備えて、入試にかかわる事務職員と試験監督(教員)は受験生が来るよりもかなり早い時間帯に出勤しなければなりませんし、大雪の降るような地域だと、それにも配慮しなければなりません。最悪の場合、前日から泊まり込んで備える職員の方もいるのです。

試験監督も楽な仕事ではありません。事前に分厚いマニュアルを渡されていて、全国すべての試験会場、すべての試験室で、同じ条件で試験が行われるように、受験生への指示のセリフも細かく決められていて、基本的には、これを逸脱することは認められません。試験中は、不正行為が行われないように注意を払い続ける他、部屋の温度や採光に問題がないかどうかという点にも配慮します。英語のリスニングの試験時間は、機械の故障等の事態にも備えなくてはならず、すべてが終了するまで、相当の緊張感の持続が強いられるのです。それでも不測の事態は色々と起きてしまいますので、マニュアルは年々分厚くなってしまっている始末です。(軽い打ち合わせのため、監督同士が小声で話をしたことについて、後日、受験生から「うるさかった」と苦情が寄せられたこともあるそうです。)

問題作成についても、色々と苦労が多いようです。共通テスト(旧、センター入試)の問題作作成は全国の大学教員から独立行政法人大学入試センターが依頼して、実際の試験実施の約2年前から1ヶ月に1度ぐらいのペースで集まって、次第に問題を練り上げていく、という作業を行っています。問題作成にあたる教員は毎年約400名にのぼるそうです。また、一度選ばれてしまうと、自分で後任者を見つけるまで辞めることができない、という噂もあります。(これはあくまで噂です。)問題は高校の学習指導要領に沿ったものでなくてはなりませんし、当然ながらミスは許されません。当日まで問題が漏洩することなど、絶対にあってはならないことですので、すべての会議は東京の大学入試センター内部で行われますが、そうすると、首都圏以外に住んでいる方にとっては、そのたびに出張となり、その負担も小さくありません。また、昨年からは、高校での教科指導に経験があり、教育委員会で行政経験も積んだ方々が「試験問題調査官」として任命されて、問題の適切性について審査を行うようになりましたので、その対応も必要になっているでしょう。私は経験したことがなかったのですが、こうやって書いていても、「大変な仕事だろうなあ」と思わざるを得ません。

これだけ注目度が高く、試験を実施する方も、受験生やそのご家族も大変な思いをさせられる共通テストですが、それが毎年色々と問題を指摘されながらも多額の国費を使って実施され続けているのは、あたり前の話ですが、大学へ入学する(入学を許可する)ためです。つまり、試験はゴールではなく、大学で学ぶための出発点に過ぎません。それでは、これを無事クリアして、入学した大学ではどのような勉強、あるいは生活が待っているのでしょうか。さらに言えば、大学は社会に対して、学生に対して、どんな役割を担っているのでしょうか。

なかなか難しく、さまざまな議論のあるテーマですが、次回は、少しだけこのことについて考えていきたいと思います。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。