明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常186 宮川花子さんと多発性骨髄腫の厄介さ

 

こんにちは。

 

先日の記者会見で、私と同じ多発性骨髄腫に罹患している宮川花子さんが、漫才復帰を発表しました。昨年も一度だけステージに上がったのですが、その時は「トークショー」という形だったので、本格的な漫才に取り組むのは4年ぶりだそうです。

宮川大助・花子といっても、関西以外にお住まいの方、漫才にさほど興味のない方はご存じないかもしれませんが、大阪を代表する夫婦漫才師で、キャリアは約45年にも及ぶ大ベテランです。

ちなみに、現在テレビのバラエティ番組で主にレポーター等として活躍している宮川大輔さんは、このお二人とは血縁関係、師匠・弟子関係などはまったくありません。大輔さんの「宮川」は本名なのに対して、漫才の大助さんは浪曲漫才師である宮川左近さんのお弟子さんで、名前は師匠からつけてもらった芸名、つまり「宮川」は屋号のようなものです。とは言え大先輩ですから、大輔さんは本格的にデビューする際に、悩み、大助さんの所にお伺いをたてに行ったのですが、この名前で活動することを快く承諾されたそうです。ご本人は、本名で活動したかったものの、難色を示されたら、迷わず、他の芸名をつけるつもりだったそうです。このあたりの礼儀がきちんとできていたからこそ、このお二人にはまったくわだかまりのようなものはなく、その後のそれぞれの活動につながっているのです。(同じ吉本興業所属とはいえ、芸風や活動範囲は全く異なりますので、このお二人が何かのイベントやテレビ番組等で絡むということはほとんどないと思いますが)

少し話がそれましたが、そんなわけで大助・花子の漫才は、しゃべくり漫才の王道を行くようなスタイルで、大変な人気を集めたものです。とくに、花子さんのマシンガンのようなテンポの速い喋り方に対して、大助さんは右往左往してしまう、という芸風は多くの人を笑いに包んだものです。

そんな花子さんが多発性骨髄腫と診断されたのは2019年12月。いきなりの診断が「余命一週間」だったそうですから、かなりのショックだったはずです。その後何度か入退院を繰り返し、治療と静養に取り組んできたのですが、昨年11月にも肺に水が溜まって心肺停止状態になり、危うく一命を落とすところだったそうです。報道されている情報から判断する限り、私よりも相当重い症状で、おそらく今も日常生活を普通におくるまでに至っていないと思われます。にもかかわらず、復帰したい、もう一度笑わせたいという意欲、エネルギーはすさまじいものです。そして、以前から彼女は「芸人は同情されたらお終いや」と言ってきたそうですが、この強烈なプライドが、彼女を舞台へと駆り立てているのでしょう。また、夫である大助さんやその他の家族、関係者の方のサポートも敬服に値するものです。

昨年心肺停止になり、3日間意識がなくなった時は、目が覚めた直後に深刻な様子で「大助さんから大事なお話があります」と告げられ、何かと思えば、大助さんの第一声は「オリックスバッファローズ)、優勝したで!」だったそうです。こんなユーモアが、どれだけ人の心を和らげるか、ご自身も大病の経験がある大助さんだからこそできるのかもしれませんね。

以前このブログの中でも紹介しましたが、多発性骨髄腫の患者数は少しずつ増えています。それでも人口10万人あたり6人程度という珍しい病気です。ちなみに、国立がん研究センターン分類では、10万人あたり6.0人未満の罹患率のがんを「希少がん」と呼ぶのですが、これに当てはめると、現在、多発性骨髄腫はぎりぎり当てはまらないことになります。

それはともかくとして、私が罹患した時には一般的な余命は長くて数年、「10年間生き続ける人も稀にいる」という厳しい病気だったのですが、その後どんどん新薬や新しい治療法の開発が進み、現在では5年生存率は約50%にまで伸びています。全がんの5年生存率と比較すると、まだまだ低い数字ではありますが、以前はさまざまな副作用や体への負担の大きさのため、高齢者にはできなかった治療も、少しずつですが、ハードルが低くなっているようですから、生存率はこれからもっと高くなると思われます。ただ、まだ根本的な治療法は見つかっておらず、完治・全快は残念ながら望める段階には達していません。いかにして寛解あるいはそれに近い状態を少しでも長続きさせるのかが、「今のところの精一杯」なのです。

そんなわけですから、患者側も、医療関係者側も、この病気とは長く付き合う覚悟が必要ですし、日常的なちょっとした体調の変化には敏感である必要はあるものの、あまり一喜一憂してもしょうがないというのが現実です。(治療がはじまって初期は、本当に薬が効いているのか、治療の効果があがっているのか、ということが心配になりますから、小さいことにでも喜びを感じたりするのは当然ですし、私自身もそうでしたが)

だからこそ、私もこのブログの中で日常的な体調の変化を逐一報告することはせず、病気とはまったく関係のない話題を多く取り上げることによって、それなりの生活をおくることができていることを言外に匂わせているつもりです。そんな感じで、このブログを読んでいただければ幸いです。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。