明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常205 映画「ショー・シャンクの空に」

 

こんにちは。

 

いよいよお盆ですね。帰省や旅行でお出かけの方も多いでしょうね。でも、来週前半には台風がまたまた来てしまう予報が出ています。毎年のことですが、高速道の渋滞もひどいことになるでしょう。皆さん、くれぐれもお気を付け下さい。ちなみに、私は以前からお伝えしていた短期入院の日程が今月16日からとなってしまったため、お盆らしき予定はまったくありません。京都では大文字の送り火がありますが、これも、今年は見送りです。昨年は、猛烈な夕立の後の澄んだ空に見事な「大」の字が浮かび上がるのを鴨川の岸辺で見たのですが・・・

 

気を取り直して、今回の話題に行きましょう。

以前、私の好きな映画についてご紹介しました。(今年5月7日の第191回で「アマデウス」、6月23日の第198回で「ローズ」を取り上げています。未読の方は、ぜひ読んでいただければ幸いです。)

今回はその3回目、「ショー・シャンクの空に」です。前のふたつの映画は音楽を題材にしていたのですが、こちらはいわゆる「脱獄モノ」です。そして、ショー・シャンクとは刑務所の名前です。

脱獄を主題にした映画というと「大脱走」、「パピヨン」、「アルカトラスからの脱出」など、どちらかというと勇ましい、というか激しく戦って自由を勝ち取る男達、というゴツゴツしたイメージが強いのですが、この映画は一味違います。もちろん戦う男を描いているですが、肉体よりも頭脳をフルに活用して道を切り開いていく主人公なのです。また、刑務所内での壮絶なイジメ、深い悩み、そこから少しずつ生まれていく友情などがたっぷり描かれています。そして何より、塀の外に出た後、出所者や脱獄者がどのように現実世界に向き合うのかが丁寧に示されているのです。

さて、主人公アンディは妻とその愛人を射殺したという罪を着せられ、ショー・シャンク刑務所送りになってしまいます。もともとエリート銀行マンだった彼は、最初のうちこそ、劣悪な環境と所長や刑務官の理不尽な脅しに苦しめられ、悩み、孤立してしまいますが、長年ここに収監されているレッドとの交流をきっかけに、次第に自分の居場所を作っていきます。そして、銀行家としての知識と経験を活かして、次第に刑務官達に取り入ることに成功します。そしてついには、所長達の不正蓄財の管理までも任されるようになるのです。他方で、自分が犯したとされた殺人の真犯人についても、証拠をつかんでいきます。ところが、彼にそのことを教えてくれた囚人トミーは「脱走を企てた」として殺されてしまいます。そう、このあたりから彼は復讐のための準備を用意周到に進めていくのです。そして収監から20年経ったある朝、彼の姿は忽然と消えてしまいます。彼の独房には、ポスターが貼られているだけだったのです。驚いている刑務官、所長達が、不正経理の疑いで警察に逮捕されるのはその直後のことでした。

話はここで終わるわけではありません。40年の刑期を終えて釈放されたレッドは、外の生活に順応できず、自殺を試みようとするのですが、アンディの残した書き置き、そして手紙を頼りに、彼の行方を捜し、そこで人生を再スタートさせるきっかけを掴むことになるのです。

アンディを演じたティム・ロビンス、レッドを演じたモーガン・フリーマンは、いずれもハリウッドになくてはならない名優です。そして、柔らかで繊細だけど、どこかにしたたかな側面をもつこの二人の信頼感、友情は厳しく理不尽な刑務所の世界の中でも失われることなく、見ている私達をとてもやさしい気持ちにしてくれます。そして、ラスト・シーンの爽快感は、他のどんな映画にもないものだろうと思います。

この映画、演出やセリフを細かく分析していけば、キリスト教神秘主義の影響を強くうけたものであることがわかるとも言われています。しかし、あまり分析的にならずに物語の流れに身を任せるだけでも、十分に楽しめるものだと思います。そして、映像の美しさも特筆すべきものです。

原作はスティーヴン・キングの短編小説「刑務所のリタ・ヘイワーズ」です。リタ・ヘイワーズとは、実在するアメリカの俳優で、アンディの独房に貼られていたポスターはこの人のものだったのです。キングというと「キャリー」や「シャイニング」など心理ホラー的な要素の強い作品の作り手というイメージが強いのですが、この映画にホラー要素はまったくありません。ただ、心理描写の巧みさはやはりキングならでは、ということなのかもしれません。

ちなみに、ショー・シャンク(shawshank)という言葉には、俗語として「こっそりと何か大きなことを成し遂げる」という意味があるそうですが、その語源がこの映画であることは言うまでもありません。。

 

外出するのを躊躇ってしまうような最近の気候ですが、お気に入りの映画を自室でゆっくりと鑑賞するのもいいですね。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。