明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常220 それぞれの秋と紅葉の風景

こんにちは。

 

京都にはいわゆる「紅葉の名所」と呼ばれるところが数多くあります。嵐山や東福寺方面に向かう電車やバス乗り場には、朝から長蛇の行列ができています。そのため、普段これらの交通機関を利用している地元の人はなかなか乗れない状況のようです。まさにオーバーツーリズムの典型のような姿ですね。

しかし、こうした観光名所を少し外れると、比較的快適に紅葉の名所を回ることも可能です。今回は、そうした中から、最近私が訪れたふたつをご紹介します。

といっても、実はふたつとも東福寺塔頭で、そのそばにありますので、混みあっている時間帯に訪れてしまうと、東福寺駅(JRおよび京阪電鉄)の雑踏に巻き込まれてしまいますので、早朝または夕方に訪れるか、比較的空いているバスを利用することをお勧めしますが。

ひとつは、東福寺からさらに南へ5分ほど歩いたところにある光明院。朝7時から拝観受付を行っています。

ここに訪れるには、「映えスポット」のひとつである臥雲橋を通らなくてはいけないのですが、早朝なら人影もまばらで、橋の上からゆっくりと紅葉の様子を眺めることができます。(昼過ぎだと、「橋の上で止まらないでください」と注意されてしまうことがあるようです。)私が訪れた時は紅葉の盛りまではもう一歩という感じで、少し残念な写真になってしまいましたが、一応あげておきます。

東福寺臥雲橋からの眺め

でも、今回はこれがメインではありません。

お目当ての光明院は、創建が室町時代初期の1391年。白砂と苔の上に石を配した枯山水庭園である波心庭と奥の木々が重なる様子が見事な庭園で知られる名刹ですが、東福寺から少し離れた住宅街の中に建っているので、訪れる人はさほど多くなく、都会の喧騒とは無縁の世界が広がっています。この庭は昭和の名作庭家である重森三玲氏によるもので、同じ時期に作られた東福寺の方丈庭園とはかなり趣が異なります。そして、縁側だけでなく、さまざまな角度から眺めることができるので、どれだけの時間でもここでぼんやりと過ごすことができるのです。

きわめて個人的な感想ですが、重森三玲氏の作る庭は、海の流れや波など自然の姿を現した枯山水とは一味違い、もっと挑戦的というか挑発的というか、見る人に直接訴えかけてくるような強い意志を感じます。彼が単なる作庭家ではなく、すぐれた芸術家として評価される所以なのかもしれません。

光明院の枯山水庭園

石の選び方にも「尖っている」感じがうかがわれます

バックの木々とのコントラストが見事

眺めがよくゆったりと過ごせます


さて、ここで一時間ほど過ごした後は次に移動しました。(その間、ぼちぼちと訪れる人はいましたが、皆さん比較的早く退散されていました。もったいないなあ・・・)

次に訪れたのは毘沙門堂勝林寺という塔頭です。と、その前に小腹が減ったので、東福寺のすぐそばにあった喫茶店(今風のカフェではありません)でモーニングをいただいたのですが、ここがまた、大変趣深かったのです。訪れていたお客さんは、地元の比較的年齢層の高い人ばかり。清水焼の食器を使っていますが、観光客はまったく相手にしておらず、あくまで地元の方々の「憩いの場」で、とても落ち着けるところでした。それなのに、BGMがジャズというミスマッチ感もまた面白い。モーニングは、コーヒーにトースト、ゆで卵、サラダがついて600円ですから、かなりリーズナブルだったと思います。

10時を回ったので、勝林寺に向かいましょう。ここはその名の通り、毘沙門天を本尊としていますが、この仏さま、東福寺建立よりも早い平安時代の作で、江戸時代から、東福寺の鬼門の方向(東北)に立地するこの寺に納められています。相当いかつい顔をしておられて、この姿で東福寺を守っているのだな、ということがよくわかるのですが、実は、この寺が近年有名になりつつあるのは、これとはまったく異なります事情があります。入ってすぐわかるのですが、まず手水にたくさんの花が飾られていて、いわゆる「花手水」が美しい姿を見せています。さらに庭を進むと、あちこちに和傘が飾られています。本堂に入っても、庭に面した縁側近くには、やはり鮮やかな和傘が広げられています。また、その美しさから、吉祥天が宿るともされるもみじ「吉祥紅葉」も見事な姿を見せてくれます。

このため、寺全体の雰囲気がとても華やかで、訪れる人の女性比率がとても高いのです。また、マスコミの取材も来ているようでした。これだけ華やかなら、写真やビデオに収めたくなるのは当然だな、と思いながら、ここでもやはり一時間近くゆっくりと過ごさせていただきました。和傘のディスプレイは2019年から始めたもので、これがなければ、もっと地味なところだったのかもしれませんが、最近の寺院は色々と工夫されているようですね。お守りやマスコットも結構売れていました。

勝林寺の花手水

和傘の花が咲いています

落ち葉を使ったちょっとした演出

 

庭園のあちこちにも和傘

 

勝林寺本堂と吉祥紅葉

 

 

そういえば、光明院では、これほど目立ちはしませんでしたが、かなりの頻度で若手アーティストの作品の展示会を行っています。私が訪れた時は「浅山を行く人々:鳴動する風景」と題して、主に台湾と日本出身のアーティストの作品がいくつか並べられていましたが、余計な説明はまったくなく、寺全体の雰囲気の中に見事に溶け込んでいて、とても自然な様子が好感を持てました。

 

一口に紅葉を楽しむといっても、今回訪れた二つの寺院はまったく違ったもので、とてもゆっくりと、そしてかなり刺激的に過ごすことができました。

これから季節は冬に向かっていきますが、こうした様々な角度で季節の移ろいを感じるのも一興ですね。そして、それを感じることができるのは、とても贅沢なのかもしれません。

 

実は、もう一か所、この秋に訪れた「隠れ紅葉スポット」があります。それについては、次回ご紹介しますが、皆さんも、知名度に頼らずに自分だけのお気に入りの場所を探してみてはどうでしょうか。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。