明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常190 一休さんとひとやすみ

こんにちは。

 

GW真っ只中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。それぞれ意義の異なる祝日をこの時期に並べて、結果的に連休をつくる、というのはおそらく日本以外ではあまり見たらないでしょうね。いっそのこと一週間をぶち抜きで完全に休日にしてしまった方が、曜日との関係を気にしたりせずに予定を組めて良いと思うのですが、何はともあれ、普段仕事に忙殺されている方も、ちょっと一休みという感じでしょうか。

というわけで、今回は一休さんこと一休宗純禅師について書きましょう。(我ながら強引な話の進め方だと思いますが、ご容赦ください。 笑)

テレビ・アニメで一躍国民的人気を獲得した一休さんですが、あのアニメで描かれていたのは少年の時、すなわち修業時代で、まだ「一休」という名前ではありませんでした。幼名は千菊丸といい、天皇家の血筋を受け継いでいるそうです。つまりもともと「良家のお子さん」だったわけで、そのため、今でも墓は宮内庁が管理しています。

しかし、皇位継承をめぐる争いが激化したことから、母親は子供をそれから逃れさせるため、わずか5歳で出家させたのです。この時点で本人にどこまで自覚があったのかはわかりませんが、こうして強欲にまみれた宮廷から背を向けたことが、この人のその後の考え方や行動に大きく影響しているようです。

せっかく仏門に入ったにもかかわらず、そこでも地位や金銭に執着している修行僧の醜い姿に絶望した彼は、学問の道に身を投じるようになります。そして24歳の時に、瞽女(ごぜ:盲目の女芸人)の語る平家物語を聴いて、その無常観を次のような歌にしたそうです。

 

『有漏路(うろじ)より無漏路(むろじ)へ帰る一休み 雨ふらばふれ 風ふかば吹け』

(人生は所詮煩悩の溢れるこの世から、来世までのわずかな一休みの出来事に過ぎないのだ。だから、何も怖いものはない。雨が降ろうが、風が吹こうが、たいしたことではないのだ。

 

この歌が「一休」という名前(号)の由来になっているのです。ですから、少年時代のこの人を「一休さん」と呼ぶのは誤りなのですね。

成人してからの一休禅師は、常に庶民の目線で仏の道を究めようとします。自らは、地位や名誉を一切求めず、外見すらも気にしなかったため、僧とは思えないボロ布をまとった姿だったそうで、このため周囲からは相当の変人とみなされ、あるいは危険人物と考えられていたのです。しかし他方で、宮廷をはじめとする上流階級の醜い権力争いに辟易としていた庶民からは絶大な人気を得ることになります。

つまり、この人の本質は決してブレない反骨精神だったわけで、その実像は、私達がイメージする人懐っこいキャラクターとはかなり違ったようです。しかしだからこそ、大衆の人気を得ることができたのです。自分が属する社会や組織、地域の雰囲気に流され、あるいは迎合してしまうことの愚かさを、この人は自分の身をもって示そうとしたのです。

ちなみに、「とんち」に関するエピソードをたくさんもっている一休禅師ですが、それらすべてが実話というわけではなく、後の時代の誰かのエピソードも混じってしまっているようです。ただ、よく考えると、有名なエピソードの中にも反骨精神ははっきりと表れています。

例えば屏風の中のトラ退治に関しては、指示命令するだけの将軍に対する強烈な皮肉になっています。また、「このはしわたるべからず」は、応仁の乱で家を焼かれて無一文になった人々が都に入ってくることを防ごうとした無慈悲で庶民の生活をまったく考えない役人に対する猛烈な反発心の表れなのです。つまり、これらは単なる他愛ない「とんち問答」ではなく、堕落した社会に対する痛烈な批判精神があってこそのものだったわけですね。

 

現在、一休禅師は京都府南部、京田辺市酬恩庵一休寺で静かに眠っています。このお寺、鎌倉時代の創建でもともと妙勝寺という名前だったのですが、戦火等で一度寺勢が衰えたのを、室町時代になって一休禅師が復興し、晩年を過ごしたところです。アクセスは必ずしも良くありません(近鉄新田辺駅から徒歩25分程度、バスも出ていますが、本数は少ないです。)し、近隣にこれといった観光名所もありませんから、紅葉シーズン以外はとても静かで、ゆっくりするにはとても良いところだと思います。決して広くありませんが、木々の生い茂る境内は、そこに佇んでいるだけで、心を「一休み」させることのできるスポットなのです。

一休寺方丈にある枯山水庭園 江戸時代初期の作庭

一休寺の新緑

境内にはこんな橋もあります。もちろん参拝客(観光客)へのサービスとしてつくられたものです。




今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。