明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常203 早朝の京都散歩

こんにちは。

 

京都は周囲を山に囲まれた盆地ですので、比較的空気が停滞しやすく、夏の暑さは格別のものとなります。とくに、夜になってもなかなか気温が下がらず、熱帯夜が続くのが気候上の特徴でしょう。また、湿気もたまりやすいので、蒸し暑さは時として異常なほどのものになります。

とはいえ、まだ本格的に陽が高くなる前の早朝は、まだマシです。京都の町を歩いて回るのならば、朝5時から2時間程度がベストということになります。というわけで、先日、早朝から開門しているふたつの寺院を散策してきました。

ひとつは真言宗総本山の教王護国寺、いわゆる東寺です。京都駅からも近く、五重塔で有名なこの寺、拝観料金が必要なエリアは午前8時からですが、境内の開門そのものは5時となっており、瓢箪池(ひょうたんいけ)周辺などは自由に見て回ることができます。私が訪れた時は、ちょうどハスが盛りの時期で、見事でした。

794年の平安京遷都当初、この新しい都には原則的に新たな寺院の創建は認められておらず、例外は都の入り口にあたる羅城門をはさんで建立された東寺と西寺のふたつだけだったのです。つまり、このふたつの寺院はもともと官営寺院だったのです。今では消滅してしまった西寺は、東寺とほぼ同じ規模、伽藍を有しており、五重塔もあったようです。つまり、このふたつの寺院の塔(高さ約55m)は、平安京の道標であり、かなり遠くからでも確認できるランドマークだったのです。

今でも、五重塔の存在感は素晴らしいものですが、羅城門とそれをはさんでふたつの高い塔がそびえる威風堂々とした姿を想い描くと、なんだかワクワクしてしまいます。

ちなみに、創建当時は同格であった西寺がその後勢いを失い、遂には廃寺となったのは、この二つの寺院の「顔」であった僧、空海と守敏の政治力やコミュニケーション力、そして持って生まれた「運」の強さの差のためだと言われています。実際、ライバル関係にあった二人ですが、空海弘法大師)が誰もが知る有名な存在であるのに対して、守敏については語り継がれることもなく、今やほとんど忘れられた存在になってしまっていますね。

そんなわけで、非常に格の高い、そして京都でももっとも古い寺院のひとつである東寺ですが、他方で、常に地元の人々に愛されてきた「地域のお寺」としての側面も持っています。毎月21日には「弘法さん」と呼ばれる市が境内で開かれ、古書や古道具、食品など多彩な品を扱う露店が立ち並びます。ここを訪れる人は、毎月数万人にものぼるそうです。

そんなことがあるからでしょうか。早朝の境内でも、近所に住んでいると思われる方々が自由に思い思いの時間を過ごしておられました。6時からは法要があって、それに参加する人もかなりいらっしゃるようです。そして、観光客はほとんど目にしませんでした。(カメラを片手にブツブツと喋っているユーチューバーらしき人は2人ほど見かけました。)その代わりに、水辺をのんびりと鳥(サギやカモ)が朝の空気の中で佇んでいました。

ちなみに、五重塔の最上部の標高は、ここからほぼまっすぐ北に6kmほど行ったところにある北野天満宮の境内の標高とほぼ同じだそうです。勾配の角度を計算すると、かなりの角度であることがわかります。京都という街は、けっこうな坂の上に建設されているわけです。京都を自転車で回ろうと思っている方、北に向かう時にはお気を付け下さい。

瓢箪池と五重塔

瓢箪池と宝蔵



代わって、京都を代表する観光地のひとつ、清水寺です。(訪れたのは別の日ですが) ここは、朝6時から開門していて、所定の拝観料(400円)を納めることによって、清水の舞台を含めた境内のすべてのエリアを拝観することができます。また、清水寺と言えば、そこに至るまでの清水坂、茶わん坂、産寧坂(通称三年坂)そして二寧坂(二年坂)に立ち並ぶ土産店や料理屋さんなども、訪れる人の楽しみのひとつとなっていて、連日満員電車の中のような賑わいを見せています。しかし、朝6時に開いている店は一軒もなく、歩いている人もまばらです。

それでも、開門直前の仁王門前には20人ほどの人が待っていました。そしてその多くは、やはり近所に住んでいると思われる方々と早朝ランニングに訪れた方です。ここは、境内も結構高低差があるので、ランニング、ジョギングにはかなり負荷がかかるようです。そのため、かなり本気で身体を鍛えている感じの人々も散見されました。

それにしても、ほとんど人のいない清水の舞台、そしてそこから見える朝の日差しに輝く京都の町は本当に美しいものでした。そして、人波を気にすることなく、ゆっくりとくつろぐことができたのは言うまでもありません。ここもまた、朝の顔は、地域の方に愛され続けている素朴な寺院の姿でした。

この清水の舞台(本堂)、実は京都盆地の東部を走る大規模な断層のほぼ真上に建てられています。大地震が来たらどうなるんだろう、と不安がよぎるような危なっかしい感じもするのですが、その土台は非常に堅固で、耐震構造の専門家などによる調査では、マグニチュード7.3程度の地震が来てもおそらく崩壊しないだろう、と結論付けられています。ただ、周囲も坂道が多いので、多くの観光客が訪れているタイミングで地震が発生してしまうと、少し恐いというのが本音です。こうした懸念があるためか、この近隣では防災意識が非常に高くなっているそうです。

開門前の清水寺仁王門

三重塔と京都の街並み

 

人影まばらな産寧坂



今回訪れたふたつの寺院、いずれも人がまばらで、早朝の気持ちよさを満喫することができました。お守りや御朱印を入手したい人、お土産を買いたい人には向いていませんが、ゆっくりとビュー・スポットをまわり、写真を撮りたい人には、お勧めです。夏の京都に観光で訪れる方は、ぜひ早起きしてみてください。チェックアウト時刻前に宿に帰ってこられるので、手ぶらで気楽に観光できるのも大きなメリットですね。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。