明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常226 干支の話

こんにちは

 

前回の投稿では龍にまつわる神社についてご紹介しました。それはもちろん、間もなくやってくる新年を見据えてのことだったわけです。しかし、「来年の干支は何ですか?」という質問に対する答えとしては、「「龍」というのは半分しか正解したことにならないことは、ご存じの方も多いかと思います。

まず、「龍」ですが、十二支の中では本来「辰」と記されるもので、「草木が成長して、形が整ってくること」を表しています。つまり、農作物の成長にも大きく関連する言葉なのです。というより、本来十二支とは植物が種子から次第に成長していく様子を表したものであり、そんななかで5番目にあたる辰はとても重要な意味を持っていたのです。その後、十二支に動物があてられるようになった時に、「龍」の字が当てはめられ、それ以来、このふたつの漢字はほとんど同じ意味を持つものとして扱われるようになったそうです。(なぜ十二支が動物と結び付けられたのかについては諸説あるようです。)

 

ちなみに、「十二支の中でなぜ龍だけが想像上の動物なのか?」という疑問もしばしばされますが、古代中国では、龍は本当に存在する恐ろしい動物と考えられていたのが、ひとつの答えのようです。(霊獣として、皇帝の象徴とされてきたとの話もあるようですが、いずれにしろ、どうやら、十二支の中での「仲間外れ」というわけではなさそうです。)そして、これが日本に伝わってきたとき、蛇神神話と合体し、龍は「龍神」として畏敬の念でみられるようになったのです。大変荒っぽいことを言えば、蛇と龍って何となく似た雰囲気がありますから、これは納得できるところですね。

さて、そんなわけですから現代において年賀状に龍の絵を描いたり、これにまつわる神社に参拝に訪れたりすることは間違っていません。

ただ、「干支」は「十二支」と「十干」の組み合わせです。普段あまり耳なじみのない十干とはもともと陰陽五行説に基づく思想で、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸という10の要素から成り立ち、暦の上では、十二支と同じように、これらが毎年順番に巡ってくるとされています。そして干支とは、このふたつの要素を見合わせたもので、60年で一周するというわけです。だから、60歳を「還暦」というのですね。

そしてこの組み合わせで見ると、2024年は甲辰(きのえ・たつ)の年ということになります。

ではそれはどんな年なのか? これも陰陽五行説の教えにしたがうと、「春の日差しがあまねく成長を助ける年」だそうです。春の暖かい日差しが大地すべてのものに平等に降り注ぎ、急速な成長と変化を誘う年・・・そんなイメージでとらえられるようです。

来る年が何かの飛躍と成長につながるようであれば、それは大変喜ばしいことです。ただ、私はこの説明の中で「すべてのもの平等に降り注ぎ」という言葉にも注目しておきたいです。

現代社会の不平等、不公平については今さら語るまでもありませんが、それがあまりにも理不尽であり、また、どんどん極端になってしまっているのが昨今の風潮のような気がします。

数回前に多田武彦氏という作曲家について書きましたが、彼の残した名曲の中で、今でも男声合唱ファンの心を捉えて離さない曲の中に、「十一月に降る雨」という曲があります。詩は堀口大學氏によるものですが、その中にこんなフレーズがあります。

十一月に降る雨に 

世界一列 ぬれにけり

王の宮殿も ぬれにけり 

非人の小屋も ぬれにけり

 

眩い春の日差しも、晩秋にしとしとと降る雨も、天からは私達すべての人間と動物、そして植物に平等に与えられます。それこそが自然の姿であり、節理であるはずです。来る年が、良いことも、そうでないことも、平等に降り注ぎ、それをありのままに受け入れられるような、そんな年になることを願わずにはいられないのです。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

年内の投稿はこれで最後になるはずです。2024年が皆様にとって実り多い年となる事をお祈りしています。

 

日本画画家、由理本出氏の筆による伏見稲荷大社の絵馬