明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常10 再入院、そして

こんにちは。

今日は、新型コロナのワクチン接種に行ってきました。1回目です。

今のところ、発熱等の症状はまったくありませんが、明日はどうなるやら。もし、明日投稿がなければ、何か副反応が出たものと思ってください。

私が受けた注射は、モデルナ社製なので、2回目は4週間後、そして抗体ができるまでに2週間ほどかかるので、結局落ち着くのは8月下旬になってしまいますね。

それにしても、今日の注射は、本当にスムーズでした。ほとんど無痛。注射や点滴、採血で腕に針がささるのは慣れっこになっている私ですが、あんなに痛みを感じなかったのは珍しいです。

以前、入院中に看護師さんに聞いた話ですが、これは単純に技術レベルの上手下手ではなく、医療スタッフ側と患者側の「相性」のようなものが大きく左右するそうです。たしかに、これまでの私の経験を思い返しても、毎日100人以上の採血を行っている採血室専属のベテラン・スタッフでもうまく採血できないときがしばしばありました。

 

さて、7年前、2014年の話に戻りましょう。

3週間ほどの一時退院期間を終えた私は、8月下旬、予定通り再入院しました。これまでもよく冗談を言い合っていた看護師さんに笑顔で迎えられ、とりあえずは何の不安もない出発となりましたが、その数時間後には、さっそく第一の関門がやってきます。

これからの治療では、カテーテル(細い管)を使うため、まずは、これを首筋から挿入することになったのですが、右側ではうまくいかず、左側でやってみましょう、と主治医の先生も四苦八苦、結局選手交代して、1時間以上かけて、やっと挿入が完了しました。首の周りはかなり出血するし、首筋は痛くなるし、一気に病人モードが戻ってきた感じでした。

「借金もしてないのに、首が回らないよお」などと軽口をたたいていたのですが、これから始まる本当の苦難がどれほどのものであるのか、その時の私は知る由もありませんでした。

 

次の日から私が受けた治療は、「造血幹細胞の自家移植」と呼ばれるものです。多発性骨髄腫の治療としては、もっとも標準的な治療なのですが、体にかなりのダメージを与えるので、体力、回復力がある程度期待できる65歳以下の患者にしか施されないものです。最近はそれ以上の年齢でこの治療を行う例もあるようですが、いずれにしろ、簡単なものではありません。

今日は、今後の話をより理解してもらいやすくなるように、その大まかな手順だけを紹介しておきます。

1. まず、かなり大量の抗がん剤を点滴によって入れる。(このため、この治療法を「超大量化学療法」などと呼ぶこともあるそうです。)

2. これは、もちろんがん細胞を叩くものだが、それよりも大きな目的はある。それは、がん細胞とともに正常な細胞も大きなダメージを受けた体が、異常を感知して、造血幹細胞を浮き上がらせることである。ちなみに、造血幹細胞とは、白血球、赤血球、血小板をつくるもととなる細胞です。つまり、これが正常に機能すれば、血液は正常な状態に近づいていくことになります。普段は、骨髄の中にあるのですが、白血球が増えると、血液全体に流れ出してくるのです。(これを促すために、白血球を増やすための注射も毎日行われます。)これを末梢血幹細胞と呼びます。

3. 血液中に流れ出て、浮かび上がってきた末梢血造血幹細胞を採取する。

4. 抗がん剤の影響が消えた頃を見計らって、採取した造血幹細胞を患者の体内に戻す。戻された造血幹細胞が正常に機能すれば、とりあえずは治療終了。あとは経過を観察する。

以上を図示すると、下のようになります。

 

大分大学 腫瘍・血液内科学講座のサイトより引用)

なお、「自家移植」とは、もともと自分の体にあったものを移植する、という意味で、他人の血液や臓器等を移植する(すべての臓器移植はこのパターンですよね)ことと比較すると、拒絶反応が起きるリスクはきわめて少ない方法です。つまり、治療そのものが失敗する確率は、数パーセント以下です。ただ、移植した造血幹細胞がきちんと正常な血液を作るようになってくれるかどうかは、やってみないとわかりません。

以上の説明は、大変おおまかなもので、必ずしも正確な表現とは言えないものが含まれているかもしれませんので、もっと正確なことを詳しく知りたい方は、しかるべき医療機関国立がん研究センターのサイトをご覧ください。

 

私の治療も、この方法に即して行われました。文字にしてしまえば簡単に見えるかもしれませんが、実は、どこの病院でもできる、というものではありません。造血幹細胞を採取するには、特殊な機械が必要だからです。

 

本日はここまで、明日からは、このプロセスを、私の経験に基づいて、少し詳しく紹介していく予定です。でも、これまでと同じように、ところどころで、息抜きできる話題も入れていきたいな、と思っています。

 

読んでくださって、ありがとうございました。