明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常14 造血幹細胞の採取

こんにちは。

 

皆さん、最近イライラしていませんか? 緊急事態宣言やらオリンピック・パラリンピックやらをめぐる報道を見ていると、もちろん問題が山積しており、対策・対応が後手後手に回っていることは事実ですが、そのことに対して、あまりにもイライラした感じの伝え方やコメントが目につきます。その根底には、「自分たちはこんなに長期間我慢しているのに」という思いがあることも十分理解できるのですが、それを感情あらわにぶつけてみても、なにかが解決するわけではありません。そんなことを言ったら、無菌室から出られない不安な日々を過ごしていた私はどうすれば良かったのか・・・

もう少しだけ冷静になり、互いを気遣う、そして笑いあう。日本という社会がそんなふうになれば良いのになあ、と思う今日この頃です。

オリンピックが始まってしまえば、多少は雰囲気は変わるのでしょうか?それとも、相変わらず問題を探すことに躍起になるマスコミがますます大声を発するのでしょうか?

 

さて、そんなことはともかくとして、話を7年前の私の入院に戻していきます。

 

高熱が出ると、造血幹細胞が骨髄から血管中に溢れ出てくるサインだという話は前々回に書きました。そして、5日ほどで、それはピークに達するようです。つまり、造血幹細胞を効率的に採取するには、そのタイミングを逃さないようにしないといけない、ということになります。

私の場合は、主治医の先生がベストと判断したのが、たまたま日曜日でした。このため、関係する医師、技師、看護師の皆さんはわざわざ日曜出勤することになったのです。本当に申し訳なく、また、ありがたく思います。

この採取は、血球成分分離装置というかなり大掛かりな機械を使用します。これを患者につないで、まず血液を採取し、機械の中で遠心分離その他の方法で成分ごとに分離し、必要なもの(この場合は造血幹細胞)だけを取り込んで、それ以外は体内に戻す,というのがここで行われる処置です。イメージは下の図のような感じですね。私の場合は、完全に仰向けに寝た状態でしたし、首筋あたりに入れたカテーテルを使用しましたが。

f:id:kanazawabaku:20210720173341p:plain

国立がん研究センターのサイトより引用)

十分な量を採取するために、約3時間かかりました。その間、ピクリとも動いてはいけない、ということはないのですが、管とつながっていることもあり、基本的にはじっとしているしかありません。ガッタンガッタンという意外に大きな機械音をぼんやりと聞きながら、時が経つのを待っていました。ちなみに、血圧と脈拍がずっと計測されていました。めったなことはないのでしょうが、身体に何らかの変化が生じてしまう場合もあるのでしょうね。そして、サポート役の看護師さんも含めて、この処置には8人ほどの方がずっとかかわっておられ、推移を注意深く見舞ってくださりました。こうして、いつもはがらんとしている無菌室の空間は、機械と人でかなり混みあった感じになりました。「そうか、このためにこの広い空間があるのか」と今さらながら認識した次第です。

余談ですが、この機械、病院には一台しかありませんでした。少し早めに来た主治医の先生は、機械のカバーをはずしながら「どうです。かっこいいでしょう。」と仰いましたが、正直なところ、別にそんなことは思いませんでした。まあ、あれは私の緊張を少しでもほぐそうとする配慮だったのでしょうね。また、「本当はもっと新しい機械を買ってほしいんですけどね」とも仰っていたのを思い出しましたので、先ほど少し調べてみましたが、某メーカーのカタログによると一台1900万円するようです。そんなに使用頻度の高い機械とも思えませんし、まあ、少し古い機械でもしょうがないだろうな、と思った次第です。

この処置そのものは、とくに苦痛がともなうわけではありませんし、少し長丁場になることを除けば、患者側の負担は少ない方だと思います。ただ、目論見通り造血幹細胞を採取できるかどうかは、そこまでの抗がん剤の量や白血球増加のための注射の回数、そして採取のタイミングを決める主治医の判断次第ということになります。もし、十分な量を採取できなければ、最悪の場合、超大量化学療法(エンドレス点滴)にまで戻ってしまうことになります。点滴終了直後の苦しさを経験していた身としては、絶対にそんなことは嫌だ、と思っていたのですが、数時間後、看護師さんがやってきて「うまく採取できたみたいですよ、先生、ニコニコしておられました。」と報告してくれました。 この主治医の先生、話をするときはけっこうフランクに接してくれるのですが、廊下を歩いているときはいつも下を向きながら、しかめっ面をすることで、看護師さんの間でも評判になっていたような方ですので、ニコニコしておられたということはよほどうまくいったのだろう、と私自身も安堵した次第です。

(先生がいつもしかめっ面なのはしょうがないだろうと思います。血液内科というところは、どちらかというと難しい患者ばかりを抱えている診療科ですから)

 

そんなわけで、第二段階も何とかクリアしました。この後、少し休憩(インターバル)をおくことになり、治療は一切行われないので、とりあえず一時退院することになりました。もっとも、これはほんの数日間だけでしたので、自宅で静養しているうちに、あっという間に再々入院の日がやってきたのです。

 

本日は、ここまで。

少し長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございます。