明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常16 いよいよ自家移植

こんにちは。

 

前回の投稿で、日本の医療機関の約半分が赤字に陥っているという話を書きましたが、「病院に行くと、いつも長時間待たされるぐらい混んでいるのに、おかしいではないか?」と感じた方もいらっしゃると思います。

この原因の一つとして、病院経営そのものが非効率であることがあげられます。患者側のニーズは多様化し、それに呼応するかのように、治療法もどんどん進化しているにもかかわらず、それに対応した効率的な経営を行うことができないでいる医療機関が多いようです。しかしそれ以上に根本的な問題として、国の医療制度や医療政策・行政の硬直性が指摘されなければなりません。ただ、これについて書き始めると、本一冊になってしまいますので、このブログでは、あえて触れないでおきます。興味のある方は、ご自身で調べてみてください。

 

さて、2014年9月中旬、再々入院して無菌室に入った私に、次の日から早速治療が再開されました。そこでまず行われたのが、またもや抗がん剤の点滴です。今度は3時間です。少しでもがん細胞を叩いておく、という目的はわかるのですが、正直なところ、いい加減、うんざりしてきます。

ただ、ひとつだけこれまでの抗がん剤点滴と異なることがありました。今回使用するものは、過去の症例から、口内炎を発症させるリスクが高いと判断されるため、それに備えることになったのです。では、具体的に何をしたのか?  答えは非常にシンプルで、「点滴の間、氷をなめ続ける」というものでした。氷は、普通の冷蔵庫で作る、普通の氷です。コツは、途中でかじって氷を砕いてしまわないこと。小さくなるまで、なるべく歯をたてずに、なめ続けることです。口内を冷やすには、そのほうが効果的ですね。

嫌かもしれませんけど・・・と言われたのですが、私はまったく平気でした。実は、以前から、例えば風呂上りなど、口の中を水分と冷気が欲しくなった時には、よく氷をなめていたからです。もちろん、3時間もなめ続けるのは初めての経験でしたが、とくに口内が変になることなく、無事3時間が終了したのです。

その次は、いよいよ造血幹細胞の自家移植へと進むわけですが、それまで数日間のインターバルをおきます。抗がん剤の影響がある間は、せっかくフレッシュな幹細胞を入れても、抗がん剤によってそれが叩かれてしまうからです。

相変わらず無菌室での変化のない生活が約1週間続いた後、やっと移植が行われました。ただ、それは私も含めて多くの方が想像するような、「移植」とは相当異なるものでした。採取後冷凍保存されていたもの(ビニールの袋のようなものに入っていたと思います。もちろん解凍して常温にもどしてあります。)を主治医の先生が持ってきて、カテーテルから体内に入れる。それだけです。機械も使用しなければ、サポートする人もいません。数分だったでしょうか。それこそ、あっという間に終わってしまい、拍子抜けしてしまったものです。

前にも書きましたが、自家移植はもともと自分の体の中にあったものをもう一度入れるものですから、そのことによる拒絶反応はほとんど起きません。他人の体から採取したものや臓器を移植するのと比べると、そのリスクはケタ違いに低いと言えるのです。それでも、拒絶反応がないかどうか、しばらく様子を見て、尿検査も行われましたが、とくに問題はなく、こうして治療のクライマックスは、「本当にこれで終わり?」と戸惑っているうちに、あっけなく終了したのです。

しかし、大変だったのはこれからだったのです。先生は「次の日からもりもり食事する人もいますよ」と仰っていたのですが、現実はそんなに甘くはなかったのです。

 

本日はここまで。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございます。暑い日が続きますが、みなさん、体調に気をつけてお過ごしください。四連休ですが、過度にアクティブに過ごすことは、色々な意味でリスクがあるようなので、注意していきましょう。