明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常23 お金の話

こんにちは。

 

前回の投稿で、コロナ・ウイルスの感染について少し書きましたが、ブログ投稿直後に、中等症患者を原則として自宅療養とする方針が、政府から示されというニュースが流れました。このことをめぐってはすでに色々と異論が噴出しています。とくに、発表があまりにも唐突であるという点と、自宅療養となった患者のフォロー体制が整っていないのではないかという点が、批判・懸念材料としてあげられています。とくに後者の問題については、医療体制全般にかかわるものですし、私たちにとっては、またもや心配の種が増えてしまったというのが、私の正直な感想です。どうも、政府や官僚はまだ新型コロナ・ウイルスをインフルエンザのウイルスと同じように考えているようで、その姿勢もまた、「この人達に日本という国を任せておいてよいのだろうか」という、別の心配の種を増やすことにもなってしまっていますね。

 

失礼しました。このブログでは、時事ネタは極力扱わないように、と心がけているのですが、私たちの健康に関係する話題は、やはり取り上げざるをえません。今後の動きを注視していきたいと思います。

 

前々回尾投稿で、レブラミドという薬を柱とする治療について、簡単に紹介しましたが、実は、その時に触れなかったデメリットがあります。それは、端的に言ってしまえば、「価格(薬価)が高い」という問題です。2021年現在、その薬価は5mg1カプセルあたり8085.30円となっています。これでも少し値下げされたようで、私が服用し始めた頃の薬価は9000円を超えていたようです。レナデックスはこれほどには高価ではありませんが、これらを併用して毎日飲むとなると、相当のコストになることは明らかですね。

ちなみに、薬価とは、医療機器医薬品の公定価格のことです。健康保険が適用される医薬品の価格は、製薬会社や病院が独自に決めることはできず、すべて国によって決定されているのです。

この他、がん治療にかかわるものとしては、例えば、放射線治療の費用も相当高額にのぼることは容易に想像できますよね。どの程度放射線を照射するのかにもよりますが、自由診療だと100万円程度は覚悟しなければならない、ということも珍しくないようです。

もちろん、ここまで紹介した価格は、すべて保険適用前のものです。ほとんどの国民の医療費は3割負担または2割負担になっていますので、実際に患者が支払う費用は、上の価格よりは、かなり安くなります。それでも、ずいぶん高くかかってしまうな、というのが正直なところですよね。実際、がんに罹患した患者の不安材料の中でもっとも多くあげられているのが、治療にかかる費用を含めた経済的な問題だと言われています。つまり、自分の健康を維持したり回復したりするための費用が、家計を根本的に揺るがすほどに過剰な負担になってしまうようだと、ちょっと乱暴な言い方ですが、「金のない奴は病院に行くな」ということになってしまいます。私は、これを以前から「経済格差に起因する健康格差」と呼んでいます。

ただ、日本には「高額療養費制度」というとてもありがたい公的な制度があります。これは、1か月に支払う医療費が自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。要するに、医療費負担に上限が定められているわけです。上限額は、その人の収入によって、定められています。(下図参照。ただし、これは69歳以下の方の場合です。70歳以上の方については、別途定められていますのでご注意ください。)

 

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 製薬会社にとって、新薬の開発は大変長い年月と費用が必要なものです。しかも、必ずしも商品化に成功するとは限りませんし、ライバル・メーカに先を越されてしまって、長年の努力が水泡に帰するということもあるかもしれません。ましてや、多発性骨髄腫のような患者数の少ない病気に使用される薬については、そもそもそれほど大量に売れるものではありませんから、薬価がある程度以上の水準でなければ、研究開発に対するモチベーションそのものが失われてしまいます。しかし他方で、それがあまりにも高価になると、医師の側も使用するのをためらってしまいますし、その薬の普及が進まなくなります。

そのように考えると、保険の枠組みの中で適用される高額療養費制度は、本当にありがたい制度なのです。ただ、この制度、一般にはさほど知られていないようです。病院でも制度や申請方法などをきちんと教えてくれれば良いのですが、色々な方にお聞きしていると、どうも徹底されていないようにも感じます。高額な医療費が必要となる事態は、皆さんにも、いつ降りかかってくるか、わかりません。自分が損をしないためには、この機会に、厚生労働省のサイト等でしっかりと調べておくことをお勧めします。

 なお、大企業従業員や公務員の場合、これを上回る補助が用意されている場合があります。これをうまく利用すると、自分の収入額とは関係なく、医療費の月額上限が5万円、あるいはそれ以下に抑えることもできるかもしれません。気になる方は、お勤め先の人事係等に問い合わせてみてください。(これに関しては、もちろん制度のない会社もたくさんありますので、ご注意ください。)

 

今日は、入院してしまったら必ず気になるお金の話でした。参考にしていただければ幸いです。長々とした文章を読んでいただき、ありがとうございました。