明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常58 がんリスクと高齢化

こんにちは。

 

11月も中盤となり、かなり冷え込むようになってきました。今年は例年より冬の足音が早く聞こえるような気がします。アメリカ国立気象局(NWS)の気象予報センターは、今冬から来年春にかけて北半球でラニーニャ現象が発生する確率が90%に上ると予想していますが、この影響で、世界中で気温の低くなる傾向が強まり、日本では、ドカ雪になる可能性も高いとのことです。そろそろ、冬支度しないといけませんね。

 

前回の投稿では、がん患者の。10年生存率の最新データを紹介しましたが、今日もこれに関連する話題です。

がんに罹患しても、長く生きられる可能性は少しずつ高くなっていることはわかりましたが、そもそも現在、がんに罹患してしまう確率は高くなっているのでしょうか?それとも低くなっているのでしょうか?

罹患する部位によっても異なるのですが、まず結論的に言ってしまうと、日本のがん患者は増え続けています。また、それ連動するかのように、がんによる死亡者数も増加の一途をたどっています。(下のグラフは少し古いデータまでしか載っていませんが、その後もこの傾向は変わりません。)

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この数字だけを見ると、がんによって死亡するリスクは全然減っていないのではないか、という疑問も湧いてきます。

ちなみに、部位別にみると、増加傾向にあるものと減少傾向にあるものとが以下のように分類できます。

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しかし、これらは主に日本全体で高齢化が進行していることと大きく関連しているようです。国立がん研究センターが高齢化の影響を統計的に除外してまとめたものによると、日本において新たにがんと診断された方の数は、1985年~1990年代半ばに増加、その後2000年~2010年前後に再び増加し、その後横ばいとのことです。なお、男性の場合は、1985年~1990年代半ばに増加して、その後2000年~2010年前後に再び増加、その後減少しています。女性は1985年~2010年前後に増加し、その後横ばいということです。つまり、少なくとも「増加傾向」とは言えないのです。

例えば、私の罹患している多発性骨髄腫を見ると、以前は「発症確率は10万人に1~2人」と言われていたのですが、現在では6.1人にまで上昇しています。数字だけを見ると驚くような増加傾向ですが、これも、高齢者が多くなったことによって罹患する人が増えてしまったということのようなのです。また、医学の発達によって、以前はがんと診断されなかったような症例についても、きちんと診断がなされるようになったという事情も働いているようです。

なお、死亡率に関しても、年齢調整を行うと、1990年代後半からは、たしかに男女とも減少傾向が見えてくるのです。

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なんとも皮肉な話ですね。長生きできるようになった結果として、重い病気にかかる可能性も増えてしまった・・・しかし、考えてみればこれは当たり前の話です。身体中のほとんどの器官は、生命が宿ってからずっと休みなく働き続けているのですから、次第に経年劣化を起こすのは当然でしょうし、がんという病気の発症もその一環だと考えれば、素直に理解できる話です。もともと、がんは高齢になるほど発症率が高くなる「老人病」だという考え方が一般的です。そして、がん細胞ができてしまうメカニズムについてのもっとも端的な説明は、「細胞分裂の際に遺伝子の写し間違い」というものですが、そうした間違いが起きるのも、長年生きているからこそなのです。

もちろん、がんという病気の発症メカニズムのすべてが医学的に解明されているわけではありません。喫煙習慣や偏った食生活、生活習慣などの要因で体調を崩してしまう方は、高いストレスのかかりやすい現代社会の中で、多くなっているかもしれません。

しかし、これらの多くは、日常的に健康に気をつけることによって、あるいは周囲がきちんと気を配ることによって、ある程度は防げるものでもあるのです。高齢化によるリスクを減らすためには、今後の遺伝子治療の発達等を待たなければなりませんが、そうであるならば、せめて、他の要因を少しでも減らすように気を配ることは決して無駄ではないはずなのです。要するに、リスクをゼロにすることはできないけれど、日常的な行動の見直し・積み重ねで、がんリスクは減らせるかもしれない、ということですね。(あくまで「かもしれない」というレベルの話ですが)

 

今回も、最後まで読んでくださってありがとうごあいました。