明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常98 改めて思う、イチロー選手の凄さ

こんにちは。

 

春はすっかり本番となり、さまざまな場面での「新スタート」に関するニュースが日々流れています。こういったニュースは、輝きに満ちた未来を見据えたもので、希望に溢れていて、気持ちがいいですね。最近は暗いニュースばかり流れることが多いので、何度かほっとします。

ちなみに、私が以前勤務していた大学でも。新学長が就任し、入学式では、さっそく新入生たちに3つの「学ぶためのヒント」を話したそうです。それは、第一に「人との出会いを大

切にしよう」、第二に「自分で考えてみよう」、そして第三に「他流試合をしよう」だそうです。まあ、社会人の立場からすれば、いずれも当たり前のこと、というか言うまでもないことかもしれませんが、知らず知らずの間に視野が狭くなりがちな受験勉強をくぐり抜けた若者たちにとっては、新生活を始めるにあたって、大事な心構えですね。

また、これらは「学ぶ」ためだけではあなく、自分なりに「生活設計、人生設計をする」ために必ず必要なことだと思います。その観点から、もうひとつ私なりに言えることがあるとしたら、「自分の価値基準は自分で作ろう」ということになります。

 それはどういう意味か?

 わかりやすい例をひとつ出しましょう。野球の話になります。

 ちょうどアメリカではMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)も開幕しました。大谷翔平選手をはじめ、何人かの日本人選手がアメリカの球団に在籍していますので、マスコミではかなり大きく扱っていますし、野球には興味のない方も、大谷選手のことはたいていご存じでしょう。

 もちろん彼の実績や存在感は否定するべくもないのですが、今回取り上げたいのは既に引退したイチロー選手のことです。彼のこともまた、「名前も聴いたことがない」という方は皆無でしょうが、少しだけ詳しく説明しましょう。

 彼が、高校を卒業して、日本のプロ野球オリックス・ブルーウェーブに入団したのは1992年。頭角を現したのは3年目からで、この年に一軍レギュラーの座をつかんでいます。その後2000年まで毎年のように数々のタイトルを獲得するなど活躍し、翌2001年からはMLBに移籍して、そこでも周囲が、いや、すべての野球ファンが驚くような実績を残して見せたのです。

少し関心のある方ならご存じでしょうが、野球の打撃に関する主要な指標としてよく使われるのが、年間の打率、ホームラン数、打点数の3つです。イチロー選手はいわゆるホームラン・バッターではなく、主にトップ・バッタでしたので、打点数もさほど多いわけではありません。しかし打率に関しては、日米双方で、誰も真似できないような数字を残しています。日本では8年連続で3割以上、アメリカではなんと10年連続で3割以上の打率を残しているのです。こんな選手は滅多にいません。

しかし、彼が目指していた数字は打率ではありませんでした。彼が最後までこだわり続けたのは、年間の安打数だったのです。つまり、少し打てないとし数字が下がってしまう打率ではなく、きちんと努力していれば数字を積み重ねることができる安打数にこそ、自分の仕事の価値基準を見出していたのです。

さまざまなデータによって選手の力量が語られるプロ野球のことですが、当時、安打数はさほど注目される数字ではありませんでした。もちろん、年間最多安打はタイトルのひとつにはなっていましたし、生涯通産安打数は張本勲選手(少し前まで、日曜朝の関口宏さん司会の番組で『喝!』とやっていた人ですね。)が3000本という金字塔を立てていたことは知られていましたが、先に挙げた3つの数字に比べると、どうしても地味に思われてしまい、注目度も低かったのです。

イチロー選手の凄いところは、自分が安打数にこだわるということをかなり早い段階から公言し、それを実践していたこと、そして、自身への注目を引き付けることによって、次第にその価値を野球界全体に認めさせていったことです。

もちろん、これを実現するために、彼はさ、さまざまな努力を重ねています。例えば、アメリカに渡った時には、MLBのピッチャーに対応するために、バッティング・フォームを改造しています。また、注目を集めるために、マスコミにも積極的に登場しています。一度など、大ヒットしたテレビ・ドラマ「古畑任三郎」のスペシャル版に、犯人役として、つまり準主役として、出演しています。テレビCMには今でも時々出ていますね。

彼が旧来のモノの見方にとらわれていたら、あのような活躍はできなかったのかもしれません。自分の価値基準は自分で決める。そして、決めたからにはその価値基準に照らして満足のいくような活躍ができるように、自分を磨く。彼には、そういった強い信念があったのだと思います。

ひとつの組織の中で仕事をしていると、なかなかこのような働き方は難しい、と感じる方も多いかもしれません。しかし、日常的に仕事をこなす中でも、必ず何かしらの「自分なりの目標」「自分なりの価値」を見出すことは不可能ではないはずです。そして、そのことが、自分のキャリアを形成していくことの大きな支柱になると私は考えます。

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。