明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常

元大学教員が綴るこれまでの経過と現在 。なお、入院と本格治療の経験については、00から34あたりまでをお読みください。 。

明日を生きる多発性骨髄腫患者の日常211 近況、そして佐野史郎さんのこと

こんにちは。

 

彼岸が近づき、朝夕は少し涼しくなってきましたが、昼間はまだけっこう暑い日が続いていますね。この時期は、細菌性の食中毒にもっとも気を付けなくてはならないシーズンだそうです。実際、先日青森県の弁当製造会社で大規模な食中毒が発生してしまったようです。少し涼しくなってきたこの時期だからこそ、ちょっとした油断が生まれてしまうのもひとつの原因かもしれません。皆さん、ご自身の冷蔵庫の中も含めて、賞味期限や消費期限を再度チェックした方が良いかもしれません。(もっとも、こういった期限を鵜吞みにして、まったく疑わないのも良くないことだと思いますが。)

 

さて、多発性骨髄腫について、けっこう大変な治療を受けておられるkihachijyouさんから暖かいコメントをいただきました。まことにありがとうございます。

この方がおっしゃる通り、この病気の治療には気長に取り組んでいく姿勢が何よりも大事なようです。焦らず、不必要に不安にならず、日々穏やかに過ごしていきたいものです。私の場合は、来年6月で告知から10年になりますので、さしあたりの目標はそれまで現在の状況をキープすることになりそうです。

そこで今回は最近の治療の動き、その他についてです。

8月中旬にサークリサという抗がん剤を中心にした新しい治療が始まって、一ヶ月以上が経過し、現在は第2クールに入っています。(4週間で1クールという括りになっています。)

第1クールは毎週通院して、4時間程度の点滴を受けていたのですが、第2クールからは、これが2週間に一度になりました。このため、心身の負担感はかなり軽減されてきているように思います。それは「毎週、通院しなければならない」「仕事やその他のスケジュールとの調整が難しい」という気持ちに加えて、実際に、種々の薬を点滴したり服用したりすることによって生じる副作用が続く期間が短くなっているということです。

薬の副作用は、患者ごとにその出方が異なるため、一概には言えないのですが、ひどい場合は、39℃を越えるような発熱、耐え難い体の痛みやどうしようもないような倦怠感などを発症してしまうようです。もちろん、そのような場合は即刻薬の使用を中止することになるのですが、そうすると、では次にどんな治療法を選べばよいのか?ということになり、患者の不安感は増してしまうのです。

私の場合、これまでに経験した主な副作用は、下痢や便秘、皮膚に軽い赤みがさしたこと、そしてしゃっくりが止まらなくなったことなどが挙げられます。まあ、いずれも比較的軽い症状で、たいていは1~2日で治まっています。とは言え、それが毎週となると、いささかうんざりしてくるものです。これが2週間に1回となると、かなり気持ちが楽になるのです。

それにしても、4時間の点滴というのは、やはり気が重いものです。点滴中は別に何をしていてもかまわないですし、軽い食事や水分補給、トイレなども自由です。もちろん、そんなに、がっつりしたものを食べるわけにはいきませんが、「終わるまで飲まず食わず」ということはありません。(看護師さんに聞いたところでは、以前コンビニで売っているラーメンを持ち込もうとした人がいるそうです。いくら空腹になるとはいえ、化学療法室のベッドでラーメンを食べる気には、私はなれません。よほどラーメンを食べたかったんでしょうかねえ、と看護師さんも笑っていました。)ただ、トイレに行くときも含めて、ずっと点滴はつながれっぱなしですし、そのために、どうしても動きは制限されてしまいます。大体の時間はスマホで音楽を聴くか、読書で時間をつぶしていますが、仕事をしている方の場合は、そんなにぼんやりとはしていないのかもしれません。この時間を利用してメールのチェックやネットで出来る資料収集などをしておられるのでしょうか。

この治療が終わった翌日、翌々日あたりはかなりの確率で胃腸の調子がおかしくなります。というよりも、その働きが鈍くなってしまいます。そのため、普段通りの食事をしてしまうと、後で必ずと言ってよいほど下痢や便秘に苦しめられることになります。これを避けるために、この2日間はできるだけ粗食で乗り切っているのです。

まあ、そんなわけで、治療法を見直さなければならないようなことはこれまで起きていません。そして、肝心の薬の効果の方についてですが、これは腫瘍マーカーを見ると、改善の傾向が明らかになっています。

腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるたんぱく質などの物質のことで、たいていの場合、血液検査や尿検査によって、がんがどの程度進行しているのか、判断する重要な材料になります。そして、私の場合は免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質の一種であるigAがもっとも重要なマーカーになっていて、この数値が異常に高くなることは、体内で良からぬことが起きていることを示していることになるのです。もっとも免疫グロブリンそのものはその名のとおり、免疫をつかさどるものですから、全部で5種類あるそれが同じように上昇していれば、何の問題もありません。むしろ、体内の免疫力が上がったものとして評価されます。しかし、igAだけが上昇するのは異常なのです。

ということを踏まえて最近のデータを見てみると、5月25日には378mg/dl(1デシリットル中に378ミリグラムのigAが存在するということ。ちなみに正常値は93~399とされています)で正常値の範囲内だったものが、6月22日には439。そして7月20日には560というように、急激に上昇してしまっています。それが、現在の治療法に変更してから1か月経過して262にまで下がり、見事に薬の効果が出ているようなのです。もちろん、今後どのように推移していくのかは慎重に見極めていく必要がありますし、igGなどの他の免疫グロブリンの数値は低いままですので、免疫力は全くアップしていませんから、その点での注意も必要です。

今後薬を使い続けることによって、白血球の数の減少なども予想されるのですが、これは免疫力低下に拍車をかけるリスクもありますから、なおさら注意が必要なのです。また、血小板の減少によって、血が止まりにくくなるということにも留意する必要があります。

つまり、とりあえずスタートとしてはうまくいっているようだが、まだまだ先は長い、ということですね。今回最初にも書きましたが、気長に取り組んでいこうと思っています。

最後に、このブログで何度か取り上げてきた多発性骨髄罹患者の俳優、佐野史郎さんについての最新情報を記しておきます。佐野さんは、ゆるゆると仕事を再開していますが、7月に、佐野史郎 meets SKYEという名義で、新しいCDアルバムを発表しています。タイトルはズバリ”ALBUM”。SKYEは 鈴木茂さん、小原礼さん、林立夫さん、松任谷正隆さんという日本のロック史を語るうえで欠かせない大物ミュージシャンによって結成されたグループで、全曲、佐野さんが作詞・作曲を担当しています。そして注目したいのはその内容です。佐野さんが大好きと思われるアメリカン・ロックを基調としているのですが、詩も曲も、そして歌い方も、とても明るく、良い意味で「軽さ」が光っているのです。彼の病状が現在どんなであるのか、私はよく知りませんが、病気の治療をしながら制作したとは思えない、自然体の姿勢がとても心地よいのです。これは、同じ病気に罹患している人への、彼なりのメッセージのような気がしました。こんな病気を抱えていると、自分は一体何歳まで生きられるのだろうか、と不安になってしまうこともありますが、できるだけ長く、このアルバムで佐野さんが見せてくれた姿勢を自分なりに捉えて、無理しない、しかし、しっかりと前を見据えた生き方をしていきたいものです。

佐野さんの音源は、下のURLから視聴できるはずです。

https://okmusic.jp/news/526696

https://www.uta-net.com/otona/news/post/47263/

 

今回も、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。